こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ
パン作りの製造工程には、ミキシング、発酵、成型、焼成…と様々ありますが、すべてにおいて意識しておくことでよりパン作りへの理解が深まる概念として、「硬化と緩和」があります。
今回はそれについて詳しくご説明します。
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パン作り上達に欠かせない「硬化と緩和」の概念について
生地の硬化とは?
パン作りにおける「硬化」とは、生地に力を加えることで骨格であるグルテンが強化され弾力がつくことを意味します。
- ミキシング(こね作業)
- パンチ(ガス抜き)
- 分割丸め
- 成形
など、人間が生地に力を加える動作はすべて「硬化」と考えてよいでしょう。
生地の緩和とは?
パン作りにおける「緩和」とは、生地を休ませて弾力が落ち着く(生地が緩む)ことを意味します。
- 一次発酵
- ベンチタイム
- 最終発酵(二次発酵)
など、生地を触らず寝かせる工程では生地の弾力が弱まり緩むため、すべて「緩和」にと考えてよいでしょう。
パン作りの工程はすべて「硬化と緩和」の繰り返し
パン作りの工程を順を追って見てみると、すべてが硬化と緩和の繰り返しであることがわかります。
- 硬化:ミキシング
- 緩和:一次発酵
- 硬化:パンチ
- 緩和:再発酵
- 硬化:分割丸め
- 緩和:ベンチタイム
- 硬化:成型
- 緩和:最終発酵
- 焼成
「硬化と緩和」を意識することで全ての工程の意味を理解できる
力が加えられ弾力を得た生地は、形状記憶の性質を持っており、形を変えても元に戻ろうとします。
そのため、もし仮に分割・丸めの後にベンチタイムをとらずに即成型しようとすると、
- 生地がすぐ戻ろうとして上手く作れない
- 無理やりいじると生地切れを起こす
- なんとかできても発酵中に形がほどけてくる
といったことが起きてしまいます。
一次発酵中にパンチがあるレシピだと、パンチ後の再発酵は最低でも30分あるものがほとんどだと思います。
これも、パンチで生地が硬化した後は、最低30分は休ませないと分割・丸めがうまくできないよ、という証拠です。
※ただし非常に柔らかい生地の場合は、それより短い時間で十分生地が緩むため、休ませる時間も短いです。
バターロールやチョココロネはこの考え方の応用
例えばバターロールやチョココロネの場合、下記のようにどのレシピでもベンチタイム後の生地玉を一旦バット型にして5~10分間休ませる工程がありますよね。
- 丸め
- ベンチタイム15分
- バット形にする(仮成型)
- 再ベンチタイム5分
- 成形
どんな素人さんのレシピでも、バット型から即成型、なんてレシピは見たことありません。
これも、一度バッド型にしてからいきなり長く伸ばすことは、生地にとっては「硬化→硬化」でストレス過多となるからです。
実際、いくら力任せに伸ばしてもすぐ縮んでしまって成型がうまくいかなかった経験がある人も多いのではないでしょうか?
「休ませる」ではなく「緩ませる」意識が大事
「レシピの時間通りに休ませたのに、縮んで上手く成型できない…」
なんて困った経験、ありませんか?
パンチ後の再発酵やベンチタイム、仮成型後の再ベンチタイムなど、これらすべての目的は「生地を休ませる」ことではなく「生地を緩ませる」ことです。
レシピに書いてある時間はあくまで目安の手段であり、しかも室温や生地の温度が適正であった場合に限ります。
時間ぴったり休ませることを目的だと勘違いしてしまうと、冬の寒い時期に生地温度が低くなってしまい発酵が遅い時、まだ十分に発酵できていない=緩んでいない状態で次の作業に移ってしまうことになります。
「時間通り休ませたからオッケー!」
ではなく、一旦生地の弾力を指で確認して、まだ弾力が強そうであればもう一度休ませましょう。
オリジナルのパンを作るときにその意識が役に立つ
パン作りに慣れてきて、オリジナルのレシピや成型を試してみたくなった時に、ふと「硬化と緩和」の概念を思い出してください。
そして、「私が今作ろうとしている成型は、一度にやると生地にストレスじゃないかな…?」と立ち止まることで、成型途中に休みを入れるなど、ベストな選択を導き出せるでしょう。
まとめ
パン作りの工程はすべて「硬化と緩和」の繰り返しであり、それぞれの工程で生地がどう変化しているかを理解することで、パン作りへの理解がぐっと深まります。
理解が深まれば目の前の生地に対する触り方も想像できて、特にオリジナルパンを作る際にとっても役立ちます。
ぜひ普段から意識してみてください♪
2023/05/05
by BAKE FIRST(製パン科学研究家)