食パン腰折れの原因は?綺麗に焼くコツを食パンのプロが解説!

こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ

食パンを焼いた後に側面や上部に大きなシワが寄って折れてしまった経験ありませんか?

特に高級食パンや生食パンでこの現象が発生しやすいのですが、基本をおさえていないと通常の食パンでも起こりうる現象です。

今回は食パンの腰折れの原因と対処法について、高級食パン専門店での経験を基に解説します。

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食パン腰折れの原因

焼成不足

まず一番わかりやすい原因が焼成不足です。

焼き込み具合が足りないと、クラスト(パンの表皮)が十分に固まらないだけでなく、水分蒸発も不十分です。

そのため、本来よりも自重が重く、でも外骨格が弱弱しいという二つの理由から、自身の重さに耐えられず折れてしまいます。

ミキシング不足

こね具合が不十分だと、パン生地の骨格と言えるたんぱく質「グルテン」の形成が足りなくなります。

わかりやすい例えをするなら、十分にこねた生地は多数の柱と梁を用いた丈夫な家、こねが不十分な生地は柱が1本しかない違法建築物件です。グルテンは網目構造なのですが、こねるほどに網目がどんどん細かくなるのですが、こねないと粗いので、まさにこの例えがしっくりきます。

当然、最初から柱が足りないわけですから、いくらレシピ通り焼いても腰は折れやすくなってしまいます。

※ただしその分しっかり焼き込めば腰折れは防ぐことが出来ますが、それを高級食パンでやってしまうと持ち前のしっとり感は薄れてしまい本末転倒です。

過発酵

特に二次発酵をオーバーさせてしまうと腰折れしやすくなります。

成型直後の生地は弾力が強く硬さがあり、窯に入れるまでにある程度緩ませないとオーブンの中で十分に窯伸びしてくれず、目の詰まった重たい食感のパンになってしまいます。

十分に発酵させることで生地の弾力が落ち着き、生成されたアルコールも生地の軟化に貢献します。

ですが逆に発酵させすぎてしまうと、生地が柔らかくなりすぎて焼成後に自身を支える力までなくなってしまいます

 

高級食パンや生食パンが腰折れしやすい原因

水分保持力の高いリッチな生地であること

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砂糖・油脂の多いリッチな生地は保湿力が高いため、普通の食パンと同じ時間焼いても水分蒸発が少なく焼き上がりの自重が重くなります。

その上、砂糖が多い生地を同じ温度で焼こうとすると焼き色がかなり濃くついてしまうので、少し低めの温度で焼くことになります。低めの温度で同じ時間だと、これまた水分蒸発が少なくなります。

焼き立てがデリケートすぎる

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上記のような生地でありながらも、しっとりさと耳の柔らかさを追求してなるべく焼き込まないようにするため、焼きたてがプリンのように柔らかくデリケートです。

その上、焼きたての状態ではまだパンの骨格が安定しておらず、冷ましてようやく骨格が完成します

そのため、普通の食パンのように勢いよくショックを与えたり、乱雑に型から外すと間違いなく腰折れします。

型離れが悪く、外すときに引っ掛かりがあるとそれも腰折れの原因になります。

 

柔らかい食パンの腰折れを防ぐための対処法

二次発酵はすこし早めに終了する意識を持つ

リッチな生地の食パンは、普通の食パンに比べて窯伸びしやすいです。その上、同じぐらい発酵させるとコシが弱くなりすぎてしまいます

なので、どのレシピでも普通の食パンより早い段階で焼成するように書かれています。「型の上から〇センチまで膨らんだら」の部分もちょっと間を広く残した状態で焼き始めます。

また、ミスって発酵オーバーさせるくらいなら、少し発酵が足りないくらいで焼く方がまだ味も見た目も完成度が高いです。

そのため、二次発酵はギリギリまで粘るよりかは、「もうそろそろだけどあとちょっとかな~」ぐらいの時点でもう焼く準備をした方が賢明です。

特に1回何十本も焼く現場ではフタを閉めたりしている間に発酵オーバーしてしまうこともあります。

ご家庭ではせいぜい多くて2本同時焼きするかしないかだと思いますので、そこまでタイムラグにこだわらなくてもいいかもしれませんが、とにかく発酵オーバーだけは気を付ける意識を持っておきましょう。

 

型に油をしっかり塗る

型離れが悪いとパンを出すときに必ず腰折れしますので、油をしっかり塗っておきましょう。

サラダ油だと発酵中に下に流れ落ちてしまい離型性が悪いので、ショートニングなどの固形油か、食用のスプレーオイルを吹き付けましょう。

スプレーオイルはほとんどのパン屋さんで使用している、超便利アイテムです。いちいちショートニングを塗るのは大変ですので、一本持っておくと食パンを焼くのが毎回楽しくなりますよ。

 

お家で使うにはちょっとお高いと思いますか?

僕も最初は値段に躊躇しましたが、実際買ってみると一本をもう1年以上使い続けており、まだあとちょっと使えそうなくらい残っています。

バターやショートニングだと厚塗りになってしまう一方でこちらはスプレーなので必要最低限の使用量で済みます。

コスパは圧倒的に最高だと保証します。

「セパレのないパン屋で働け」と言われたらそれだけで断ってしまう、ぐらいには手放せないアイテムになってしまいました(笑)

焼成後はなるべく優しく扱う

焼成後のショックは普通の食パンのように「ガンッ!」と強くは叩きつけないでください。20㎝くらい上から自然に落とすぐらいの気持ちで良いでしょう。

型からパンを出すときは、型ごとひっくり返してそのまま上に型を抜いてそのまま冷ますのが無難です。

あるいは、食パンと同じくらいの幅で長辺は少し長めにカットしたダンボールにペーパーを巻き付けた板を2枚用意し、1枚の板にパンをひっくり返して出します。この時はパンの上面が下を向いているので、もう一枚の板をパンの側面にぴったり当てて90℃倒します。するとパンの側面が下を向いて板に乗っているで、今度はその板でそのまま90℃倒すとパンの底面が下を向きます。こうして正位置で粗熱をとる方がより安定します。

(文章ではなかなかわかりづらいので、機会があったら動画で紹介します)

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また、家庭のオーブンで焼いた高級食パンや生食パンは、どうしても下火が不足して底部が弱いです。

なので、粗熱をとる時はケーキクーラーなど粗目の網ではなく、一旦クッキングシートなどを敷いたダンボールや木板に置いて、ある程度手で持てるようになったらクーラーに載せましょう。この時も慎重に触ってあげてくださいね。

 

こんなオーブンだと腰折れしやすい!

値段が安くオーブン機能はあくまでオマケみたいな電子レンジにありがちですが、電熱ヒーターが天面にしかなく熱風循環ファンもないタイプだと、食パンの側面までしっかり火を通すには向いていません。

食パンの上部だけがやたら色付き、側面が極端に薄い、なんてことありませんか?

その場合、美味しくキレイに焼くにはいくつかの工夫が最低限必要です。

予熱の際に天板も事前にアツアツにしておくことはもちろん、予熱温度を実際の焼成温度より高めに設定しておくことで強い下火を再現するとか…もちろん生地を入れた後は設定温度を下げて弱い上火を再現します。

ちなみに「石窯ドーム」や「ビストロ」のような高機能のオーブンレンジであれば、ファンで熱風が循環して型の側面にもしっかり熱が当たり側面の火通りも良いです。

 

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2023/05/30

by BAKE FIRST(製パン科学研究家)