こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ
高加水のパン、作ったことありますか?
私は初めて高加水のパンを食べた時の衝撃は今でも忘れられません。
今回は高加水のパンが美味しくなる理由と、作るうえで気を付けることをまとめました。
高加水にすることのメリット
酵素も酵母も働きやすくなる
生地内の水分が多いことで、酵素や酵母は生地全体に均一にいきわたりやすくなり、熟成も発酵もスムーズに行われるようになります。
熟成がスムーズになるということは、甘味も旨味も増えます。
発酵がスムーズになるということは、発酵で得られる数々の香り成分をより豊富に得られます。
結果的に、より味わい深いパンが焼きあがるというわけです。
パン生地の熟成と発酵の仕組みはこちらの記事でお伝えしています。
でんぷんのα化(糊化)が進みやすくなる
でんぷんは加熱されると水を吸うことでα化できます。
水分が少ない生地内では、熱が加わってもでんぷんのα化効率はあまり良くありません。でんぷん達による水の争奪戦状態だからです。
でんぷんがα化することで、体内での消化が良くなるだけでなく食感や味も良くなります。ごはん粒をかみ続けると甘くなるのは、α化した米粒のでんぷんが唾液に含まれるでんぷん分解酵素「アミラーゼ」により麦芽糖に分解されるから。
α化していないでんぷんはβでんぷんと呼び、甘味の感じ方も食感も、消化も劣ってしまいます。
加水を多くすることでα化はスムーズにより深く進み、消化も食感も味も良くなるというわけです。
爆発的な窯伸びが得られる
窯伸びとは、パンの焼成中の膨らみのこと。
オーブンに入れることで生地の温度が上がり、生地中の炭酸ガスが膨張します。また生地中の水分が蒸発することで体積が一気に増えます。つまり、炭酸ガスと水は窯伸びの材料とも言えます。
加水が多いパンは扱いが難しいですが、うまく扱うことができれば良好な窯伸びが得られ、大きな気泡が無数に出来て、もちもちでありながらも軽い食感の食べやすいパンとなります。
また、気泡が大きく成長すれば、生地内部の膜は薄くなるため火通りが良くなり、でんぷんのα化が更に進みやすくなります。逆に言うと生地の扱いが悪いと十分に窯伸びが得られず火通りも悪いパンとなるため、難易度が高いのです。
高加水生地を扱う時に気を付けること
手粉をたっぷり使って生地を傷めないこと
高加水生地はとてもべたつくため、一度手にこびりついてしまうと生地もメンタルもボロボロになってしまいます。
特に成型の段階では、手粉不足で表面の汚いパンになってしまわぬよう、手粉は十分に使用して生地を傷めないようにしましょう。
必要以上にガスを抜かないこと
高加水の生地はとてもデリケートなので、生地をつぶすように扱ってはいけません。
ガスを抜こうとするのではなく、パンチや成型で結果的にガスがほどよく抜けた、ぐらいの感覚でちょうどいいでしょう。
作業台は傷ついてないか?良質なこね台で作業しよう
木製のペストリーボードを数年使用していると、表面が傷ついてきて、その部分は生地がこびりつきやすくなってしまいます。
当然、高加水のパン生地を扱う際には余計にべたついてしまうため、余分に手粉が必要となってしまいます。
せっかく高加水の配合なのに、いたずらに手粉を多く生地に抱き込んでしまっては、結果的に水分率は下がってしまいます。なにより手粉の塊が生地内に入ってしまうと、それは焼成後も残ってしまいます。
なので、後で後悔しないためにも丈夫で上質なこね台を1枚用意しておきましょう。
僕も以前は木製の捏ね台を使っていましたが、キズがついて生地が扱いづらく不衛生でもあったため廃棄して現在はまーぶるめん台のレギュラーサイズを使用しています。
生地離れが良く、程よい重量感があるため安定しており重宝しています。
お手入れも基本的にはシンクで洗い流す必要はなく、霧吹きで濡らしてからドレッジカードで表面をかきとり、最後にふきんで吹き上げればOKです。アルコールスプレーを噴霧すればなお衛生的です。
忖度なしに、「もっと早く買えばよかった」と思ったおすすめグッズです。
2023/05/06
by BAKE FIRST(製パン科学研究家)