小麦や卵、乳製品などのアレルギーは頻繁に見かけますが、米アレルギーってあまり聞かないですよね。
でも完全に無いわけではなく、実際に米アレルギーは存在します。
そして、通常アレルギーの原因となるのは食品に含まれるたんぱく質ですが、米においてはでんぷん質がアレルギーに間接的に関係しているとのこと。
珍しい事例ですが仕組みが分かれば納得できますし、その考え方を応用するとなんとなく小麦でアレルギーが発現しやすい理由も考察できるような感覚を覚えました。
今回はそんな米アレルギーについて解説していきます。
米アレルギーとたんぱく質
米アレルギーで原因となるたんぱく質「オリゼニン」
米アレルギーで主な原因となるたんぱく質は、グルテリンという種類に分類される「オリゼニン」というたんぱく質です。
グルテリンという分類の中には、小麦ではグルテニン、大麦ではホルデニンがあります。
小麦アレルギーで原因となるたんぱく質は上記のグルテニンではなく、プロラミンという分類に含まれる「グリアジン」というたんぱく質です。小麦アレルギーの人が小麦以外の穀物で摂取すると反応が出てしまう可能性があるものとしては、同じくプロラミン分類の「セカリン(ライ麦)」、「ホルデイン(大麦)」、「ツェイン(とうもろこし)」などがあります。グルテリンに分類されるグルテニンやホルデニンなどがアレルギーの原因となることはほとんど少ないようです。
これらの穀物はプロラミン分類のたんぱく質が占める割合が多くて5割となることもあるほど多いのですが、逆に米にはプロラミン分類のたんぱく質は1割にも満たない量です。
ここからは私の憶測ですが、おそらくグルテリンよりもプロラミンの方がアレルギーを引き起こしやすいのではないでしょうか?そのため、プロラミンがかなり少ない米はアレルギーを引き起こすことが比較的少なく、逆にプロラミンの多い小麦やその他の麦はアレルギーを引き起こしやすい、私にはそのように見えます。(科学者ではないので真偽はわかりません、このことは忘れてください)
米たんぱくで起こるアレルギーの間接的な原因として考えられているもの
これには残存農薬や化学肥料の影響が示唆されています。
基本的にはこれらの物質は、紫外線や微生物などの影響により自然に分解されていくように作られています。
しかし、分解の過程にある一部の農薬や化学肥料の物質が米のたんぱく質と結合して「異常たんぱく質」を形成することがあるそうです。
もちろん、すべての農薬と化学肥料で必ずそのようなことが起こるとは断言しづらいですが、世の中様々なメーカーから多種多様な農薬と化学肥料が生産されていますから、それぞれ大きな差があるでしょう。
また、実際に異常たんぱく質が形成されていたとしても、同じように農薬を使用した米を食べた全員が米アレルギーになるわけではありません。そこにはもっと他の様々な要因が絡んでくるはずです。(なので決して農薬反対運動を主張しているわけではございません)
米アレルギーにおけるでんぷんの関係性
アミロペクチンの消化能力が低い人がいる?
でんぷんにはアミロースとアミロペクチンという異なる形状のものがあることはご存じですか?
こちらで超詳しくでんぷんについて解説していますが、簡単に言うとアミロースが豊富な米がうるち米、アミロペクチンが多い米がもち米です。
つまり、アミロペクチンが多いほどもちもちとして粘りのある米になるのです。
でんぷんはブドウ糖がたくさん連なって形成されるものですが、アミロースはブドウ糖がほとんど一直線に連なっているのに対し、アミロペクチンはまるで無数に枝分かれする木のような連なり方をしています。
つまり、アミロースよりもアミロペクチンのほうがより複雑な構造をしているでんぷんであるということです。
そのため、元々アミロペクチンを消化する能力の低い人が世の中には一定数いることが指摘されているようです。
お酒をいくら飲んでも平気な人もいれば少量飲んだだけで具合が悪くなる人がいたり、麻酔がよく効く人とあまり効かない人がいたり、濃いめのコーヒーを一杯飲んだだけで具合が悪くなる人がいたり、世の中には多くの個人差がありますからね。でんぷんの分解能力に個人差があることも何ら不思議ではないように思います。(コーヒーで具合が悪くなるというのは私の話です)
アミロペクチンの未消化がアレルギーに与える影響
この複雑な構造をしたアミロペクチンは、米に含まれるたんぱく質の一部をその枝分かれの隙間に強く包み込んでしまうようです。
このアミロペクチンを分解できないことには包み込まれたたんぱく質も分解できません。
人間は基本的にたんぱく質をアミノ酸という形まで分解することによって安全に体内に吸収することができます。アミノ酸まで分解できないまま吸収してしまうとしばしばアレルギーの原因となることが多いのです。
米アレルギーの人は、アミロペクチンの分解能力が弱いことによって結果として米たんぱく質を未消化のまま吸収してしまいアレルギーを引き起こしている、このように指摘されているようです。
そのため普通のうるち米よりももち米で作られたお餅などでより敏感に症状を発現するそうです。
でんぷん質がアレルギーに与える影響から考えること
アレルギーには直接の原因となるたんぱく質だけでなく、実に様々な外的要因・内的要因が関わっていることが米アレルギーに関する情報からわかりました。
ただ一貫して言えるのは、未消化のたんぱく質が吸収されることによってアレルギーが引き起こされるケースが多いこと。
リーキーガット症候群やセリアック病によって傷ついた腸壁は未消化のたんぱく質を吸収しやすくなってしまい、おなかの調子だけでなく様々な体調不良の一因となりうることが指摘される主張も出ています。
色々と諸説ある遅延型アレルギー検査ですが、実際にリーキーガット症候群にかかっていると思われる人は実に多くの食物で高反応が出ていると言われています。
ここからは私の憶測も含めてお話しますので全てを鵜呑みにはせず一人の食品関係者としてのイチ意見と捉えて参考程度にしてください。
リーキーガット症候群やセリアック病でなくとも、アレルギーを発現しやすい食品というのはそれらのたんぱく質を消化する能力に個人差があり、消化能力の低い人が多いということも考えられますし、小麦においてはやはり米と同様にでんぷんの影響もあるのではないでしょうか?
小麦の品種によってもアミロペクチン含有量は違いがあります、アミロペクチンの消化能力が低く小麦たんぱくの消化能力も低いという人がいれば、その人はコムギアレルギーを発現しやすそうに思えます。
また、「口どけの良いパンにするためにあえてミキシングを最小限に抑えてグルテン形成を抑えたり、そもそもグルテン量の少ない粉を使う」といった製パン法を採用するお店がありますが、確かにこれらの作り方のパンは口溶けが良いです。
くちどけが良いということは、消化しやすいということにもつながるはずです。(口の中では唾液に含まれるアミラーゼという酵素がでんぷんを分解していますから)
グルテンが形成されるということは、グリアジンとグルテニンが結合するということ、そしてミキシングを長く強く行うということはグルテンの網目構造をより細かく密にしていくということ。どちらも広い目で見ればたんぱく質構造がより複雑になっていくと考えられます。
同じでんぷんでも複雑な構造をするアミロペクチンが消化しづらいのであれば、たんぱく質も構造が複雑なほど消化しづらい人がいるのではないかと思います。
色々述べましたが、ようするに人間の体は我々が思っている以上に個人差が大きいということ、農薬や化学肥料による間接的な影響を強く受ける人もいれば受けない人もいるであろうということ。
そして世間に蔓延る情報を「○○はこうなんだ!」と鵜呑みにするのではなく、あくまで参考意見として取り入れ、あとは自分で考え自分の体に問うことが大事であり、それが自分に最適な健康的食生活を見つける遠回りに見えて一番の地道な近道なのではないでしょうか?