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こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ
パン作りの「丸め」という工程、実は"丸めちゃいけない場合もある"って知ってましたか?
作るパンの種類や生地の状態などによって、どんな形に整えるべきか、どれだけ生地に締まりを与えるべきか異なってきます。
ここではパン生地の丸め作業において、生地の状態に合わせて最適なアプローチが出来るようになる考え方を解説します。
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丸め作業の目的を知ることで丸め加減がわかる
パン生地を分割してすぐ成型せず、一旦丸めて休ませる目的は…
- 同じ形に成型しやすいように整えておくこと
- 分割で不均一になった生地を丸め作業によって同じ状態にすること
分割した後の生地はそれぞれ形も厚さも不均一になっています。
なのでそこから同じ形を作るのは大変ですし、分割作業のクオリティによってはそのままきれいな形に成型することが困難な場合もあります。
そういった状況を、一旦丸めでリセットすることで成型がしやすくなります。
特に工場など大量生産の現場において、同一品質を製造する際には非常に重要な工程となってきます。
また、分割作業は皆さんが思っている以上に生地に圧力を加える作業です。
それだけでなく、元の生地の端の方なのか内側の方なのか、切った場所によっても生地の状態は微妙に違います。
そういった意味での分割後の不均一さも丸めで均一化を図ることが出来ます。
丸めのやり方は文章と画像ではお伝えしきれないので、こちらの動画をご覧ください。
「これさえ伝えれば未経験者でも一発で習得できた」が詰まってます!
これは誤解です!間違った丸めの目的
ネット上では丸め作業の目的として誤解を生むような解説も散見されます。
それらを言葉通り鵜呑みにしてしまうと、生地の状態に応じた最適なアプローチが出来なくなってしまい、最悪失敗の恐れもあります。
ここでは誤解されがちな間違った丸めの目的について解説します。
ガス抜きをすること
確かにソフト系のパンなどにおける丸め作業は、パン作りの中でも強めの丸めに値するので結果的に生地のガスは抜けます。
ですが、それはあくまで結果であって目的ではありません。
中にはなるべくガスを抜かないよう意識した丸め作業をすべき場合もあります。
自家製酵母や微量イーストで作る発酵速度の遅いハード系のパンがその最たる例と言えるでしょう。
熟成(注1)による生地ダレは早いけど発酵によるガス発生は遅い、ホシノ天然酵母や自家製酒種などを使った生地によくあるパターンですが、これも同様です。(注2)
こういった場合においては生地のガスをなるべく保持したまま生地にハリを与えるよう意識します。
結果として多少ガスは抜けますが、ガスを抜くつもりでバシバシ抜いて丸めた生地とは全然違う生地になります。
(注1)熟成とは…パン作りにおいては、生地内に含まれる"酵素"がでんぷんやたんぱく質を分解することで生地が変化することを「熟成」と呼ぶ場合が多いです。詳しくはこちらの記事で解説しています。
(注2)…一次発酵で膨らみ100になった生地を、丸めでガスを抜いて膨らみ0にした生地とガスを抜かない用丸めた膨らみ50の生地で比べてみましょう。
二次発酵で膨らみ100にするためには、膨らみ50の生地なら40分で到達するけれど、膨らみ0の生地だともう少し時間がかかりますよね?ここでは60分かかるとします。
どちらも元は同じ生地ですから、熟成により生地が弱くなる速度は同じです。
ということは、丸め段階でガスを抜きすぎてしまった膨らみ0の生地は、二次発酵で余分に長く時間がかかる分、生地がダレてしまう恐れがあります。
一方で膨らみ50で調整した生地なら二次発酵の時間が短縮されるため、生地のコシをある程度残した状態で焼成に移れる可能性が高まります。
ごく一般的な強力粉は機械製粉により酵素活性がとても低いため熟成速度を気にする必要はありませんが、酵素活性高めな粉を使っていたり酵素が多い生地はこの辺の原理を考慮しなければ上手に作ることは出来ません。
切り口からのガス逃げを防ぐ
これも良くある誤解ですが、生地の分割断面から発酵ガスがプシュ~っと逃げ出すなんてことはありません。
パン生地を一つの風船として考えてしまうと、確かに切り口からガスが逃げ出すと誤解してしまうでしょう。
しかし実際にはパン生地は無数の小さな気泡で出来ていますよね?
つまり、無数の小さな風船の集合体だと考えるべきなのです。
例え切り口が露出していたとしても、内部の風船は健在です。なのでそのまま膨らむことができます。
もちろん切った部分の風船は割れてしまうわけですが、それは生地のごく一部でしかなく、大部分は内部に無数に集まった風船ですよね。
世の中には分割した生地を丸めずに、切りっぱなしでそのまま発酵・焼成させるパンもたくさんあります(パン・リュスティック、パヴェなど)。
更にはシナモンロールやクロワッサンのように切り口をあえて露出させるパンもありますが、しっかり膨らんでいますよね?(膨らむ方向はある程度制限されたりはしますが、それはガスが逃げるからではなく膨らみやすい方向に膨らんでいるだけです)
なので、たとえ切り口が露出していたとしてもガスが逃げるなんてことは無いので安心してください。切り口を隠すことを意識するあまり過剰に生地を丸めたり締めたりする方が問題です。
(もっと言うと、どんなにキレイに切り口を隠して丸めた生地であっても、ガス漏れはします。それは切り口云々の問題ではなく生地のガス保持力の問題です。)
丸め加減の調整
どんな形に成型するかによって丸め加減を変える
丸パン成型やあんぱん成型のような、最終的な形が丸になる成型をするつもりなら、特に意識することはなく普通の丸め加減で問題ありません。
しかし、バターロールやチョココロネのように複雑な形に成型するなら、丸め加減を少し弱めにするべきです。
麺棒をつかったり細長く伸ばすような成型は生地にかなりの力が加わります。
そのため成型前に生地の弾力を十分に落ち着かせることが重要となります。
なのでこれらの成型では丸生地から一気に最終形を作らず、一旦しずく形(バット形)に仮成型し、5分休ませて本成型に移るように指示されます。
ですが丸めの段階で生地をキツく締めてしまうと弾力が出すぎて、生地を休ませる時間がより長く必要になってしまいます。
しかし酵母菌の働きはノンストップなので、より長く休ませた分だけ発酵も進み、糖分が消費されて味が薄まってしまいます。
生地の柔らかさ次第で丸め加減を変える
作るパンによって生地の柔らかさは異なります。
また同じ生地でも一晩冷蔵させた生地は常温の生地よりも硬さがあります。
硬い生地を通常の生地と同じように丸めてしまうと、生地が緩むまでに時間がかかるのでベンチタイムが長時間必要になります。
それどころか生地を締めすぎて表面が破れてしまう場合も…
”丸め作業”という呼び方だから
「生地を真ん丸にしないといけない」
と思われがちですが、決して真ん丸である必要はありません。
多少いびつな形でも、次の成型が少しでもやりやすくなればそれでいいのです。
とじ目を必要以上にキレイにつまんで一点で閉じようとする必要もありません。
"丸め作業=生地を丸くすること"ではない
丸めの目的が「成型しやすくする」である以上、丸くしたら成型しづらくなってしまっては本末転倒です。
バゲットなど細長く成型する物であれば、最初から丸ではなく長方形をイメージしたナマコ形に整えたり、コッペパンなら楕円形にしたりする方が次の成型はよりやりやすくなります。
また、同じ長方形に整えると言っても、とても長く成型したいならその分長めに整えないと希望の長さに成型することが難しい場合もあります。
これは生地に余計な力を加えたくないハード系のパンや細長く成型したいパンでよく使われるやり方ですが、これも分割後に行う"丸め作業"の一種です。
ちなみに生地によっては折りたたむことすらしない方が良い場合もあります。
分割した生地を少し伸ばして長さを揃えるだけ、そのまま休ませる。そんな、ほとんどいじらない"丸めない丸め作業"が最適な場合も存在します(結構特殊なパターンですが)。
こちらの動画で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
まとめ
丸め作業は生地を丸くするだけではない。生地の状態に応じて扱い方を変える。
これを理解することでより一層パン作りが上達します。
ぜひ意識してみてください!
2023/05/20
by BAKE FIRST(製パン科学研究家)