ドライイーストが少ないとどうなる?メリットや上手に作るコツを解説

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こんにちは!"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ

最近はドライイーストの使用量を減らして長時間発酵させて作るパンレシピを多く見かけますが、ドライイースト少ないと実際にパンはどうなるのでしょうか?

ここではイーストの量を少な目でパンを作った場合に得られるメリットと、少ないイーストで上手に作るためのコツを解説します。

※当記事ではご家庭で一般的に使われるインスタントドライイーストのことを「ドライイースト」と表記しています。

インスタントドライイースト

ドライイーストが少ないとどうなる?メリットとデメリット

イーストを少量で作るメリットは…

  • イースト臭を軽減できる
  • 生地の熟成が期待できる
  • 適正発酵時間のストライクゾーンが広い

 

イーストを少量で作るデメリットは…

  • 発酵による膨らみに時間がかかる
  • 窯伸びが小さくなる場合がある
  • 良い形状が保てない場合がある

それぞれどういうことなのか、詳しく見ていきましょう。

イーストを少量で作るメリット

イースト臭の軽減

インスタントドライイースト

イーストで作るパンはその使用量が多いほどイースト臭が強くなってしまいます。

イースト臭は現代ではパンらしさを表現する香りとも言えるので100%悪者ではありませんが、強すぎると不快なにおいとして感じられます。

イーストが多すぎるレシピの場合、少なくすることでイースト臭を軽減できます。

生地の熟成が期待できる

フランスパン専用粉(準強力粉)や石臼挽きの粉を使った場合や、モルトや麹を配合した場合、酵素の働きによる生地の熟成がよく進みます。

熟成には、でんぷんが麦芽糖に分解される作用やたんぱく質がアミノ酸に分解される作用などがあります。

特にパン作りで重要なのは前者のでんぷん分解による糖分生成で、砂糖を入れない生地では酵母菌の栄養源をそこからまかないます。

パン作り 酵素 でんぷん分解

イーストが多いと糖分生成の速度より酵母菌の糖分消費の速度が勝ってしまい、味が薄くなったり発酵の持続力が低下したりと弊害があるのですが、イーストを少なくすることで酵母菌の糖分消費が遅くなるため、必要な発酵時間が長くなり、結果として熟成がより深く進みます。

適正発酵時間のストライクゾーンが広い

イーストが多くて発酵時間が短いと、「いま焼くべき!」というベストなタイミングからあっという間に発酵が進んでしまい過発酵になってしまいます。

ですがイーストを少なく作ることで、発酵の進みが遅くなるため、ベストタイミングから過発酵になるまでの猶予が長くなります

そのため時間に余裕を持って安心して作ることができます。

イーストを少量で作るデメリット

発酵による膨らみに時間がかかる

イーストを少なくすると、当然ですが発酵による生地の膨らみに時間がかかります。

特にオーバーナイト法など一旦生地を冷たくする製法では、翌日の復温時間や発酵時間が大幅に長く必要となってしまう場合もあります。

窯伸びが小さくなる場合がある

イースト 量 窯伸び

イーストを少なくすると、窯伸びも小さくなる傾向があります。

「イーストの量は窯伸びとはあまり関係が無い」という説を唱える人もいますが、僕は原理的にも経験的にも関係あると考えています。

窯に入れた瞬間に酵母菌が全て死ぬわけではなく、生地温度が60℃を超えるまででの間は酵母菌が最後の力を振り絞り発酵するからです。

仮にパン生地の酵母菌が窯入れ後8分で全滅するとしたら、その8分間は酵母菌が全力で発酵するので、当然イーストが多い方がより膨らみます。(時間はパンの大きさや火通りの良さによって変わります)

良い形状が保てない場合がある

イーストを少なくしすぎて、適切な大きさまで膨らむのにかなりの時間が必要になってしまうと、その分だけ寝かせる時間が長くなりますよね。

ですが生地のコシは寝かせるほど緩くなっていきますので、あまりにイーストを極端に少なくして発酵時間を長くすると、コシが緩くなり上に膨らむ力が劣ってしまいます。

また酵素活性が強い粉を使っている場合は特に、発酵時間が長くなるほど、その分酵素による熟成も進むため生地がダレやすくなってしまいます。

少ないイーストで作るのに向いているパン

砂糖を入れずに作るバゲットやバタールをはじめとしたフランスパンやカンパーニュなど、いわゆるハード系の部類のパンは少ないイーストで作ることに向いています。

というより、あまりイーストを多くして作ることに向いていないと言えます。

こういったパンの多くは、窯伸びで上に膨らむ力としてクープが盛り上がる原理を利用します。そして、最終的なパンの体積の大部分をこの窯伸びによって作り上げることが可能なので、発酵力が弱くても十分に良いパンを作りやすいでしょう。

少ないイーストで作るのに向かないパン

  • 砂糖が高配合の菓子パン
  • とにかく上に大きく膨らませたいふんわり食パン
  • ダッチブレッド(タイガーロール)

砂糖が20%を超える菓子パン生地では、砂糖による浸透圧上昇で酵母菌の発酵力が著しく弱まります。

その上、砂糖の効果で通常の生地よりいくらか緩みやすく、上に膨らむより横に膨らむ傾向が強いです。

そんな菓子パン生地であまりにもイーストを規定より減らしてしまうと、発酵がなかなか進まないだけでなく、最終発酵に時間がかかってしまう結果としてパンの形状がダラっとしてしまう恐れがあります。

食パンについても、フランスパン生地を使ったハードトーストなどハード系食パンであればまた別ですが、少なくとも上に大きく膨らませたいふわふわ食パンを作る場合においては、イーストを極端に少なくするのはオススメできません。

もちろん、自家製酵母でソフト系の食パンを作るレシピも世の中にはあるので必ずしも強い発酵力が必要というわけではありません。

ですが、そういったレシピは発酵時間だけでなくパンチ回数、粉の選定、型に詰める生地の量など様々な工夫のもとで成り立っています。

なので一般的なレシピからイーストだけ極端に少なくして作ろうとするのは中々難しいと考えるべきです。

 

そして意外なのがダッチブレッド(タイガーロール)です。

発酵させた米粉のペーストを生地表面に塗ってから焼く、非常に珍しい作り方のパンですが、このような綺麗なひび割れ模様に焼き上げるのが意外と難しいパンです。

このひび割れ模様が出るためには、表面が完全に焼き固まる前に生地がグンと窯伸びする必要があります。

既存のレシピ通り作れば簡単にきれいな模様は出せるのですが、少しでも窯伸びが低下するようなアレンジをしてしまうと模様が出なくなってしまいます。

なので、イーストを少なくすることはもちろん、あらゆるアレンジをすること自体が非常に難しいパンです。

レシピの指示よりイーストを減らして作りたい場合

もし、レシピで指示されているイースト量より減らして作りたい場合は、以下の点を確認・調整する必要があります。

  • 元々、そのイースト量は粉100に対していくつなのか?(ベーカーズパーセントの把握)
  • イーストが少ないほど発酵時間は長く必要になること
  • イーストを減らした分だけ窯伸びは低下する傾向があること(特に食パン系)

ですが根本的に考え直してほしいポイントがあります。

イーストを減らすこと自体が目的になってはいませんか?

確かに無糖生地のハード系はイーストが多いと粉の熟成速度を追い越してしまうため、少ないイーストでゆっくり発酵させ、熟成を追い越さないような作り方をしなければ美味しく作れません。

ですが、そうではないパンもたくさんあります。

特に副材料で味と風味を演出するリッチなパン(菓子パンなど)は、イーストを減らしすぎると発酵膨張が遅くなりすぎて、膨らむのを待っている間に生地のコシが弱くなり良い形状で焼けなくなる場合もあります。

生地の水和を十分に進めて老化の遅いパンを作ることが目的ではありませんか?

だとしたら、イーストを減らさなくともオーバーナイト法を取り入れることで生地のしっとり感はかなり向上できます。

同じイースト量でも常温1時間フロアタイムでその日のうちに焼き上げるのと、冷蔵庫やチルド室などで一晩オーバーナイトさせるのとでは、パンのしっとり感および老化耐性に雲泥の差が生まれます。

僕自身、数年前は「とにかくイースト少なく発酵時間長くすべきだ!」と(若気の至りで)息巻いていたのですが、数々の製パン実験を経て今では発酵時間よりも「生地時間」の方が重要だという結論に至りました。

※「生地時間」とは…粉と水が合わさってから焼成で「パン」になるまでの間の、この世に「生地」として存在している時間のこと。僕が作った造語ですが、この考え方を取り入れることでパンの製法と老化耐性に対する正しい理解がグッと深まります。

イースト臭がキツイ原因はイーストにあらず!?

恐らく、イーストを減らして作りたいと思う方の中には「作ったパンがイースト臭い…」という悩みを持っている方も多いでしょう。

しかし、それは必ずしもイーストの量が原因とは限りません。

もしお使いのレシピのドライイースト量が粉100に対して1.2以下(菓子パン生地で1.4以下)であれば、そのイースト量は適正と言えます。決して多すぎるなんてことはありません。

 

それなのにイースト臭が気になるのであれば、こね不足や生地の火通りが悪いことが原因の可能性があります。

生地の火通りの良し悪しには、発酵具合・焼成温度・焼成時間などの要因が絡んできます。特に発酵不足で生地が詰まった状態で焼くとかなり火通りは悪いです。

※たとえ生焼けでなくても、火通りの良し悪しで生地の風味や口溶けなどが大きく変わってきます。

クッ〇〇ッドなどに落ちているようなよほど信頼性に疑問があるレシピを除いて、レシピを改造するより先にまずパン作りの基本をしっかり身につけましょう。

 

あるいは、焼成後に即食べているのであれば、それも原因かもしれません。

惣菜パンなど具材があるパンであればまだいいのですが、食パンやロールパンなどの生地がメインのパンであれば、焼成直後のパンを食べるのはオススメできません。

粗熱を冷ます過程でパンの表皮の風味が内側まで浸透し、内側に残っていたアルコール成分などは逆に揮発します。これでようやくパンが落ち着いて美味しくなります。

十分に揮発しないうちに食べた時に感じるアルコール臭を「イースト臭い」と勘違いしているパターンもいくらか見られますので、お心当たりのある方は見直してみてください。

※理論的に一番美味しい食べ方は、ちゃんと冷却して風味をなじませた後に「リベイク」することです。


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