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窯伸びとは?
別名「オーブンスプリング」。
その名の通り、パン生地がオーブンの中で膨らむ現象のことを指します。
まるでバネのように勢いよく膨らむことからオーブンスプリングとも呼ばれているのでしょう。
最終的なパンのボリュームの3~6割くらいは窯伸びによる膨らみと言えるので、美味しいパンを作るには欠かせない現象です。
※割合の数値は体感的なものです。
※窯伸びが担うボリュームはパンの種類によって大きく前後するため幅を持たせた表現となっています。特に高加水のハード系は窯伸びが担う割合が大きいです。
なぜ窯伸びが起こるのか?膨らみの大小に影響を与える要素
パン生地がオーブンに入って熱を加えられることによって、
- 酵母菌が死滅するまでの活発な発酵
- 生地内炭酸ガスの熱膨張
- 生地内水分やアルコールの蒸発による膨張
主にこれら三つの働きによってパン生地が大きく膨らみます。
ここからパン生地の窯伸びの大小に影響を与える要素をそれぞれ解説していきます。
根本的な3つの要因
イースト量
パン生地の温度は、オーブンの中に入れられた直後からすぐに高温になるわけではありません。
様々な要因があって生地の温度変化は意外と緩やかです(特に中心部ほど)。
酵母菌は60℃前後で死滅しますが、生地温度が60℃に達するまでは最後の力を振り絞り活発に炭酸ガスを発生させます。
そのためイーストが多い生地ほど窯伸びも大きいと言えます。
※中には「イーストによる窯伸びへの影響は非常に微々たるものではないか」という見解もあるようですが、僕は実体験を元にイースト量の窯伸びへの影響は決して少なくないと考えています。
発酵具合
窯伸びでは生地内の炭酸ガスの熱膨張が関わっているため、膨張する炭酸ガスが元から多いか少ないかで膨らみが大きく変わってきます。
生地内の炭酸ガスは発酵によって生成されるので、発酵不足だと窯伸びは劣ってしまいます。
吸水量
生地中の水分が水蒸気になることによる体積の膨張も窯伸びの要素なので、水の配合量によっても膨らみは変わってきます。
実際、高加水のハード系は焼き上がりのボリュームを窯伸びが7割担うといっても過言では無いほど大きな窯伸びが得られます。
もちろん、多ければ多いほど窯伸びするわけではなく、高加水でもうまく作らなければほとんど窯伸びしない失敗パンになります。
ですが適正な吸水量で作ったパンと不足したパンで比べると、膨張する水蒸気の量に差があることなどから窯伸びの具合は変わってきます。
その他の要因
生地の硬さ
生地が硬いよりは適度に柔らかい方が窯伸びは良いです。
水不足による硬さはもちろん、発酵不足による生地のコシ過剰も影響します。
これは新品の風船は硬くて膨らませにくいけど、手でよく伸ばして柔らかくすると膨らませやすいことをイメージするとわかりやすいでしょう。
生地の温度
オーブンに入れる直前の生地が何度なのかによっても窯伸びの大きさが変わってくるとも言われています。
これは、オーブンに入れてから生地の温度が60℃に達して酵母菌が死滅するまで(又は表面が焼き固められるまで)の間は発酵による膨らみも考えられるからです。
一般的なストレート法のレシピでは、焼成前の生地温度が32℃となるように作られるのが普通です。
生地のガス保持力
生地が脆くガス保持力が弱いと、せっかくオーブンに入れて得られる急激な膨らみに生地が耐えきれずガス漏れしてしまいます。
これはひび割れた風船にいくら空気を入れてもうまく膨らまないのと同じです。
ガス保持力低下の要因は、
- 捏ね不足
- グルテン量が少ない
- 発酵オーバー
- パウダー類(ココアなど)
- 大きめ具材(くるみなど)
などがあります。
窯伸びしないとパンはどうなる?
パンの最終的なボリュームは、発酵による膨らみと窯伸びによる膨らみによって決まります。
そして、この二つが占める割合はパンによって違います。発酵による膨らみがボリュームの7割を占める場合もあれば、発酵による膨らみは3割程度でしかなく窯伸びによる膨らみが7割を占める場合も。
なので、窯伸びしないとパンが悪くなるとは一概に言えないのですが、本来得るべき窯伸びが得られなかった場合の影響を挙げるなら、
- 見た目の大きさに劣る
- ふわふわ・エアリー食感の低下
- 火通りの悪化による消化・口溶けの低下
- 口溶け低下による食感・甘さ感覚の減少
このような欠点が考えられます。
特に高加水のハード系パンのようにボリュームの7割近くを窯伸びが占めるようなパンですと、これらの悪影響がより際立ちます。
上手に作れば消化の良いパンになるはずが、窯伸びしなかったせいで消化の悪いパンに一転してしまうのは、なんだかもったいないですね。
食パンがうまく窯伸びしない理由
- 吸水不足
- 発酵不足
- 発酵オーバー
- こね不足
- 成形での生地締めが弱すぎる
- 窯入れ直前の生地温度が低い
- 上火強すぎ、または下火不足
窯伸び一つ見ても、このように様々な原因が考えられます。
どれか一つが極端に悪いのか、あるいは全てがちょっとずつ悪さをしているのか、その時々で違うでしょう。
また、食パンは型に対して生地の量を多く入れるほど窯伸びしやすいとも言われています(特に山型食パンの場合に顕著に見えます)。
そのため型に入れる量が少ないと窯伸びの勢いは若干劣るとも言えます。
また、ゆめちからやスーパーキングのようにグルテン量が多すぎる粉を100%で作っている場合、本来その分だけより強く長くミキシングが必要になるのですが、手ごねのためこね不足になってしまい普通の強力粉にくらべてかえって窯伸びが悪くなってしまうケースも頻繁に見かけます。
バゲットがうまく窯伸びしない理由
バゲットの窯伸びはクープの開き具合に比例します。
クープはいわば「生地膨らみの逃げ道」です。生地の内部はまだ膨らみたがっているのに、先にクープが焼き固まってしまうと逃げ道が無くなり、結果としてクープも開かず膨らみも低下するというわけです。
クープの開き具合を悪化させてしまう原因としては
- 家庭用オーブンである
- 成形で表面に抗張力を与えられていない
- 切り込みが浅すぎる
- 発酵不足
- 発酵オーバー
- 生地のガス保持力不足(こね不足・パンチ不足・粉が弱いetc...)
このように多岐にわたります。
特に成型での抗張力を意識できていないと、どんなに良い窯やナイフを使っても絶対に開きません。
ここの対策をやらずに高いクープナイフを買ったり切込みの練習を延々と続けてしまう人も多いです。
これらの記事を読めばクープについての理解はかなり深まるはずです。
一つ一つ、焦らずじっくり確認していきましょう。