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こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ
「レシピに強力粉って書いてあるけど、ウチに無いなぁ…」
そんな経験ありませんか?
今回は強力粉を代用できる粉類はあるのかどうか、そして代用する際の注意点について解説します!
※主にパン作りをベースに解説を進めていきますが、基本的な考え方はパン以外でも同じです。
そもそも「代用」の定義によって答えが変わるので注意!
「強力粉 代用」と検索して出てくるサイトの多くは、
「○○粉は強力粉の代用になります!」とか「代用にはなりません!」といった具合に、白黒ハッキリと書かれすぎています。
しかし、代用出来るかどうか調べたくて検索している人の中には
「全く同じものを作りたい!同じものが作れないなら仕方ないから買いにいく!」
と思っている人もいれば、
「同じものじゃなくてもいいから、それなりに形になればいい。レシピ調整も自分でやる」
というスタンスの人もいるはずです。
この場合、同じ題材であっても前者には「代用にはなりません」と答えて後者には「それならまぁ代用できるよ」と答えられます。
このあたりの「代用」という言葉の定義をしっかり明記せずに出来る・出来ないを決めつけて解説するサイトが非常に多く、間違った認識を広める結果となっています。
そのため当サイトではその部分についても誤解が無いよう丁寧に解説していきます。
故に、他のサイトに比べて文章が長めとなってしまいますが、正しい知識を得る為と思って上記のことを意識しながら読んでみてください。
薄力粉で強力粉の代用は出来るか?
薄力粉でパンが作れるかどうか…
これについては「作れる」と断言できます。
実際に薄力粉のみで作るパンのレシピは多くあり、その中には強力粉とは違う美味しさが味わえる美味なものもあります。
薄力粉と強力粉の違いは「たんぱく量」です。
小麦粉生地の骨格は、グルテニンとグリアジンというたんぱく質が結合してできる「グルテン」が担っているのですが、薄力粉は強力粉に比べてグルテン量が少ないです。
そのおかげで、生地の作業性や膨らみなどが劣る一方で、歯切れ良く口溶けの良いパンが出来上がります。香りも異なります。
よって、全く同じものを作るための代用は出来ませんが、異なる美味しさが味わえる別物のパンを作るなら代用可能です。
薄力粉で作る際の注意点
薄力粉は強力粉に比べて吸水能力が低いです。
もし強力粉100gのレシピで水の分量が70gだったとして、そのまま強力粉を薄力粉に置き換えるだけだと非常に緩くベタつく生地になります。
もちろんそれはそれで非常に美味しいパンにはなりますが、かなり難易度が高いです。
作りやすい生地感にするには水分量を減らす必要があります。
「どれくらい減らせばいいのか?」
これに関しては、作りやすさと美味しさのバランスをどの程度とるのかで大きく変わってくるところなので非常に難しい問題です。
以下に薄力粉だけで作るパンのレシピが掲載されているので、そちらを参考にしてみてください。
(美味しさを捨てずに作りやすさも求めた、そんな配合になっています。初心者の方で美味しさを減らして作りやすさを更に求めたい場合は水を更に減らして構いません)
薄力粉だけで作るパンのレシピ
薄力粉だけで作るパンレシピの多くは、
- パサパサしすぎ
- ふわふわ感が無い
- 風味が単調
といった傾向にあります。
このレシピは水分量を絶妙なバランスに調整し、オーバーナイト法を採用することでそれらのデメリットを解消したパンになります。
トーストすることで強力粉パンでは絶対に味わえない至高のサクみと口溶けを味わえますので、ぜひ作ってみてください♪
中力粉で強力粉の代用は出来るか?
中力粉でパンが作れるかどうか…
こちらも答えは「作れる」です。
中力粉と強力粉・薄力粉はそれぞれ「たんぱく量」で分類されています。
たんぱく量が少ないものから薄力粉<中力粉<強力粉の順番に分類されています。
薄力粉よりもたんぱく量は多いため、薄力粉のみで作る場合よりもレシピ分量の調整幅は小さいですし、まだパンに向いていると言えます。
ただし、意外と知られていないことですが違いはたんぱく量だけではありません。
(もちろん銘柄にもよりますが)焼き色の付き方や風味の質感などあらゆる点で違いがあります。
中力粉は主にうどんを作ることに最適化されていることが多いため、
- しっとり感(保水性)が高い
- モチモチ感がある
といったメリットがある一方で
- パンや焼き菓子らしい香ばしさに欠ける
- 焼き色が付きにくい
といったデメリットがある傾向も。
そのため、薄力粉と同様に全く同じものとしての代用は出来ないが、別物としてのパンを作るのであれば代用は可能と言えます。
中力粉で作る際の注意点
こちらの動画をご覧いただくと中力粉の特性がよくわかります。
全ての中力粉に当てはまるわけではありませんが、多くはうどん用に製造されているため焼き色・香りの点で劣る傾向があります(ハッキリとわかるレベルで)。
なのでそれを補うためにも
- 脱脂粉乳を増やす(イチバン簡単な調整でオススメ)
- 乳製品や卵を使う(水分量の計算が必要)
などの調整をした方が美味しく作れるでしょう。
(なぜ脱脂粉乳を増やすのかはこちら↓のページでわかります)
また、薄力粉と同様に吸水能力は強力粉よりも低いため、レシピの水分量を少し減らす必要があります。
ここでも減らし具合は美味しさと作りやすさのバランスをどの程度とるかによって変わってきます。
準強力粉で強力粉の代用は出来るか?
準強力粉は主にフランスパンなどハード系のパンを作る際に使われる小麦粉ですね。
なので当然ですがパンは作れます。
そして、実はハード系だけでなく食パンなどソフト系のパンを作ることも可能です。
一般的に準強力粉は「たんぱく量が強力粉と中力粉の中間」と言われていますが、実際には銘柄ごとに様々です。
中には中力粉と謳われる他製品と同じくらいのたんぱく量だったり、強力粉と謳われる製品よりも多いたんぱく量の場合もあります。
なので僕から言わせてもらえば、準強力粉という分類方法は「たんぱく量」ではなく「オススメ用途」での分類と言ったほうが真実に近いです。
中力粉が主にうどん用に最適化されている傾向があると先ほど説明しましたが、準強力粉は主にハード系のパン(砂糖を添加しないパン)を美味しく作るために最適化されています。
故に、今回の題材と逆パターンの「準強力粉の代わりに強力粉&薄力粉で代用」はオススメできない、という考え方もあるくらいです。
よって、同様に全く同じものを作るための代用は出来ないけど、わりと近いものを作るための代用は可能で、むしろ強力粉では得られない恩恵が得られる場合もあると言えます。
準強力粉で作る際の注意点
強力粉100%のレシピを準強力粉に置き換える場合、やはり吸水能力は少し低くなるので水分量を減らす必要があります。
とはいえ、薄力粉ほどではないのでだいぶ作りやすいでしょう。
「どのくらい減らせばいいのか」については、使う準強力粉の銘柄次第で大きく変わります。
なんならモノによっては、無理やり同じ水分量で作ってもほんの少し難易度が上がるだけ、そんな場合もあるでしょう。
目安はたんぱく量です。これが少ないほど吸水能力も少なくなる傾向があります。
しかし灰分が高い粉の場合、たんぱく量のわりに吸水能力がそんなに高くないこともあります。(たんぱく量というのはグルテニン・グリアジン以外のたんぱくも含む量だから、灰分高めの粉は「~以外の」が多い傾向にあるのです。)
なのであくまで目安程度に。
国産小麦で強力粉の代用は出来るか?
国産小麦と一言で言っても、その特徴は銘柄ごとに様々です。
「国産強力粉」と謳われている粉であっても、たんぱく量や給水能力などの実態は準強力粉と同等で強力粉とは言えないものもあります。
とはいえ、一般的な強力粉の代用として非常に使いやすいものも中にはあります。
それは「ゆめちからブレンド」や「春よ恋」です。
ゆめちからブレンドは北海道産の超強力粉「ゆめちから」という非常にグルテン量の多い粉をベースに複数の国産小麦をブレンドしたものです。
ゆめちから単体だとグルテンが多すぎて吸水能力は高いがコシが強すぎてかえって膨らみの悪い生地になりますが、グルテンの少ない他の粉と混ぜることで丁度いい塩梅になっています。
春よ恋は単体でも一般的な外国産強力粉と非常に近い生地感で作ることが出来ます。「国産小麦は吸水能力が低く、膨らみも小さい」というそれまでの概念を払拭した現代のスタンダードな国産小麦と言えます。(ハルユタカがその走りだが、生産が不安定すぎてスタンダードにはならなかった)
故に、国産小麦は銘柄によっては強力粉の代用として十分使えると言えます。
※他にも〇〇ブレンドと謳われているものや、「富澤からの贈り物 北海道産ホームベーカリー専用粉」など、ブレンド系は一般的な強力粉の代用として使いやすい傾向にあります。
国産小麦で作る際の注意点
銘柄によってはたんぱく量が「強力粉」とは言えないような、準強力粉レベルの粉が「国産強力粉」と謳われていることがあります。
これをそのまま強力粉100%のレシピで置き換えると、準強力粉と同様に緩く過剰にベタつく生地になってしまいます。
なので、たんぱく量を見て一般的な強力粉より明らかに少ないのであれば、水分量を減らす必要があると予測しましょう。
米粉で強力粉の代用は出来るか?
米粉は小麦粉と違って、グルテンの元になるたんぱく質が含まれていません。
そのため、強力粉の代用として100%置き換えてパンを作ることは出来ません。
最近ではグルテンフリーの米粉100%パンというものが普及していますが、これはドロドロの米粉生地を発酵させて焼くというもので、生地感はパンというよりケーキです。
サイリウム(オオバコ粉末)を使えば手で触って成型できる米粉生地になりますが、それでもグルテンのような「良く伸びて弾力のある」質感にはならず、仕上がりも全くの別物です。
小麦パンと米粉パンは、同じパンという呼び名でありながらも実態は全く別の食べ物だと認識すべきです。
ただし、小麦グルテン粉末を添加した米粉生地であれば、小麦パンと似た質感の生地でパンが作れます。吸水能力はグルテン粉末の添加量によって変わってきます。
また、強力粉と薄力粉をブレンドして作るレシピのように、強力粉の一部を米粉に変えてブレンドして作ることも可能です。
こちらの動画で強力粉と米粉をブレンドした際のパンの違いについて解説していますのでぜひご覧ください。
米粉で作る際の注意点
強力粉と米粉のブレンドで作る場合、米粉にグルテンの元となるたんぱく質が含まれていない分、米粉を増やすほど吸水能力も低くなり膨らみも劣ります。
レシピの水分量調整は必須で、ブレンド割合も2割までがオススメです。
また、米粉と小麦グルテン粉末で作る場合、生地のコシが強い一方でデリケートな側面もあります。
一次発酵をとるかとらないか、レシピ作成者の意図によって変わってくることもあります。(僕が以前いたお店では一次発酵無しで即分割スタイルでした)
やはり小麦生地とは大きく異なる質感であることに違いないので、いきなり強力粉レシピを元にアレンジして作ろうとせず、米粉&グルテン粉末の専用レシピでまずはどんなものか感覚をつかむことをオススメします。
2023/04/03
by BAKE FIRST(製パン科学研究家)