オーバーナイト法とは?ふわふわに焼くコツとオススメレシピ

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オーバーナイト法とは、パン生地を冷蔵庫に入れて一晩寝かせて翌日以降に焼き上げる製法のことで、別名「低温長時間発酵」とも呼ばれています。

一般的には生地を捏ね上げて一次発酵を通常より短めに行った後に冷蔵庫で一晩冷蔵発酵させる手法がとられますが、他にも分割丸め後や成形後に冷蔵庫に入れるなど、そのタイミングは様々です。

ここではオーバーナイト法で作るパンの特徴や上手に作るためのコツについて解説します。

 

オーバーナイト法の特徴


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メリット① パンの保湿性向上

オーバーナイト法で作ったパンの最も大きな特徴として挙げられるのが、パンの保湿性が高いことです。

パンの保湿性は生地がいかに水和しているかが影響します。

水和とは簡単に言うと粉のでんぷんが水分をしっかり吸収し抱き込むことを意味します。

パン生地を捏ね上げた時点で見た目はしっかり水分を吸っているように見えても、実は分子レベルではちゃんと吸えていないのです。

しっかり水和した生地を作るには、生地完成から焼成までの時間「生地時間」をより多く設けてあげることが必要。でんぷんがゆっくり時間をかけて水分を吸着します。

冷蔵庫で丸一日寝かせることになるオーバーナイト法は、一般的な3~4時間で焼き上げる製法に比べて生地の水和において大きく有利と言えます。

メリット② 奥行ある発酵風味

低温長時間発酵とは言っても、常に低温発酵をさせるわけではありません。

あくまで工程の中の一部を冷蔵発酵にするだけで、それ以外の工程は常温で進めることになります。

ということは、常温発酵と低温発酵の2つを行き来する製法とも言えます。

実は発酵の温度帯が異なることで、実際に生成される発酵風味成分が微妙に違うのです。

常温と低温を行き来することでより様々な風味成分を醸し出し、結果としてオーバーナイト法は奥行ある発酵風味が感じられると言われています。

デメリット① 発酵オーバーのリスクが高い

基本的に冷蔵室というと平均で5℃前後です。

酵母菌は4℃以下で休眠状態となるので、冷蔵室の温度はギリギリ発酵がゆっくり進む温度帯と言えます。

とはいえ非常にゆっくりだから一晩や二晩寝かせておくことが可能なのですが…

問題は冷蔵庫に入れた後、スグに生地温度が5℃まで下がってくれるわけではないこと。

発酵速度は生地を入れた環境の温度ではなく、生地そのものの温度次第で変わってきます。

なので入れる直前の生地温度が高いほど冷えるまで時間がかかるため発酵オーバーのリスクが高く、生地が大きいほど芯まで冷えるのに時間がかかるのでこれも発酵オーバーのリスクがあります。

あらゆる要素が関わっているため冷蔵庫に入れてからどれくらい発酵が進んでしまうのか、具体的な数値で予測が出来ないことがオーバーナイト法の難しさです。

デメリット② 復温具合で最終発酵時間が変わる

オーバーナイトさせた生地は基本的に一度復温してから成型作業に入ります。

生地温度が17℃以下だとグルテンの柔軟性がほぼ無いために、本来成型作業で得られる生地のコシが得られなかったり生地を傷めてしまうからです。

この復温で何度まで温度を上げるかで、最終発酵にどれくらいの時間がかかるのか変わってきます。

そのためレシピでも正確な時間を指定することができません(目安として提示することはありますが)。

となると、作り手が正確な発酵具合の見極めをするしかありません

通常は室温で復温させるのが一般的ですが、部屋が寒い冬は中々温度が上がってきません。なので暖かい発酵室で復温させるなど、機転を利かせた対応が肝です。

捏ね上げ温度や作業室温などを厳格に守ればレシピ通りに作れる普通の製法に比べると、このあたりの曖昧さが難しさと言えるでしょう。

「甘味が増える」は本当?

「オーバーナイト法を採用して発酵時間を長くすることで生地の熟成が進み甘味が増える」という記述も見かけますが、これは必ずしもそうとは限りません

パン生地が熟成によって甘味が増えるメカニズムは、小麦粉(又は添加したモルト等)に含まれる「酵素」がでんぷんを分解して麦芽糖に変える作用によるものです。

ですが、そこで生成された麦芽糖も酵母菌のエサとなり最終的に炭酸ガスとアルコール(又は水)になってしまいます。

例えオーバーナイト法であっても、酵母菌による糖分消費スピードが熟成による糖分生成スピードに勝ってしまっては、甘味は増えないどころか減る場合すらあります。

「糖分の需要と供給のバランス」と考えるとわかりやすいですね。

特にイーストが多い配合の生地だと甘味の増加は期待できません。

逆にオーバーナイト法でなくとも、熟成スピードの速い生地なら甘味の増加が期待できます。ホシノ天然酵母のように麹菌の強力な酵素を利用した材料を使っていれば、例えストレート法であっても24時間冷蔵庫で寝かせたイースト生地より甘味の増加が期待できます。

 

オーバーナイト法で美味しいパンを作るコツ

オーバーナイト法では発酵オーバー対策を行うことが最も大きなポイントです。


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冷蔵発酵後の復温時間はどのくらい?

生地の大きさによって、また室温によって復温にかかる時間は変わります。

室温が25℃程度で50g程度の小玉生地なら30分もあれば十分に成形可能な温度まで復温できるでしょう。大きな生地になると時間がかかります。

冬でお部屋が寒い場合はオーブンレンジの発酵機能や発酵器に入れて復温するのが良いでしょう。

何時間までオーバーナイトできる?

庫内の温度次第で上限時間は左右されます。

特に家庭用冷蔵庫だと置く場所によって温度が全然違います。よく冷える場所に置けば翌々日まで持ち越すことも可能ですが、冷えの悪い場所だと翌日見たら発酵オーバーになっているなんてことも。

野菜室だと冷蔵室より温度が高く、発酵がじわじわ進むためレシピ通りの時間以上に寝かせておくと確実に発酵オーバーになります。

イーストの量が少ないほどストライクゾーンは広くなり作りやすくはなりますが、それでも野菜室の中での翌日と翌々日は大きな差があるので、レシピを守ることをオススメします。

※冷蔵室前提のレシピは冷蔵室で、野菜室前提のレシピは野菜室で、それぞれ変えずにやることをオススメします。

オーバーナイト法だと膨らまない?状況別対処法

一次発酵のオーバーナイトで膨らまない

オーバーナイト法での生地の膨らみの大部分は生地を入れてから冷え切るまでの間に発行する分です。

生地温度が5℃程度まで冷え切ってからの発酵はそれほど多くを占めていないと言っていいでしょう。

なので、翌日生地があまり膨らんでいなかった場合は前者の発酵が不足していたと言えます。

イーストをレシピより勝手に減らして作ったのであれば、元に戻してみましょう。

特に何も変えていないのであれば冷蔵庫に入れる前の常温発酵時間を少し延長してみましょう(あるいは捏ね上げ温度を少し上げる)。

二次発酵のオーバーナイトで膨らまない

二次発酵(最終発酵)をオーバーナイトにして翌日の朝に焼き立てを作る。

そのようなタイプの場合、一次発酵をオーバーナイトにする場合と比べて生地が小さいのですぐに冷えます。なのでその分発酵オーバーのリスクは減りますが思ったほど膨らんでいない場合もあります。

その場合は冷蔵庫に入れる前の事前発酵を少し増やすのも良いですが、増やしすぎて発酵オーバーになっては元も子もないので、オススメは翌日に追加発酵することです。

 

これって失敗?オーバーナイト過発酵対策

翌日、冷蔵庫を開けて生地を見たら

「うわ…めっちゃ膨らんでる…」

なんて経験ありませんか?

アルコール臭もするため過発酵の失敗かと思ってしまうかもしれません。

ですが、不快ではない程よく心地よいアルコール臭なら全然問題ありません!

むしろそれが奥行きのある発酵風味となります。

よっぽど強すぎて不快に感じたり酸味臭がするといった場合でなければ大丈夫です。

 

とはいえやはり発酵の進み具合は深く、その分生地の糖分は消費されているでしょう。

故に甘味は減り焼成での焼き色も薄くなりがち。

イーストを減らすのが最も単純な対策ですが、それだと最終発酵の時間などがレシピ通りにならなくなります。

なので、生地のこね上げ温度を下げたり、冷蔵庫に入れる前の常温発酵の時間を減らすなどの対策も視野に入れると良いでしょう。

オーバーナイト法のパンレシピ

オーバーナイト法はあらゆるパンに応用できるオールマイティな製法です。

ここではオーバーナイト法の効果を存分に体感できるレシピをご紹介します。


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薄力粉100%でパンを作ると、どうしてもパサパサしがちです。

ですが、オーバーナイト法を採用することで薄力粉のでんぷんが水を十分に吸収し、しっとり感も十分に味わえるパンに進化します。

強力粉では絶対に味わえない至高の歯切れ良さと口溶けはそのまま、パンの老化も遅い…ぜひ一度お試しあれ!

 

2023/04/13

by BAKE FIRST(製パン科学研究家)