中種法とは?メリットやデメリット、他の製法との違いや誤解を科学的に解明!

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こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ

「中種法でパンを作れば、パンがカチカチにならない!」

なんて解説を目にしたこともあるかと思いますが、実はコレ…誤解に繋がります。

中種法にまつわるネット上の解説の中には誤解や間違いが溢れています。

今回はそんな中種法の特徴やメリットデメリットについて、ありがちな間違いの訂正も交えて解説します。

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中種法とはどんな製法?

中種法(なかだねほう)とはパンの製法のうちの一つで、スーパーで売られている大手メーカーの食パンの多くが中種法で作られています。

パン作りに使う粉の一部(または全部)を取り分け、事前に水・酵母と混ぜ合わせて硬めの生地を作ります。これを中種(なかだね)と呼びます。

この中種を発酵させた後に、残りの材料と混ぜ合わせて本生地を作ります。

中種法とは やり方 手順

このように事前に発酵させた生地を本生地作りで混ぜ合わせるため、「発酵種法(はっこうだねほう)」の一種として扱われています。

中種法で作るメリット

  • パンのボリュームアップに繋がりやすい
  • ミキシング時間が短縮される
  • 生地が扱いやすく機械耐性もある
  • 材料や工程の影響を受けにくい

中種法は生地作りが二段階に分かれています。

1段階目は中種仕込みですが、この時のこね具合は粉気が無くなる程度であってほとんど捏ねません。

ですが発酵工程の間に中種のグルテン酸化が進み、丈夫なグルテンが出来上がります。既にある程度酸化が進んだグルテンを本生地で混ぜるため、ミキシング時間が短縮されるだけでなく良く膨らむ生地になりやすいためパンのボリュームが大きくなる傾向にあります。

また、中種法では本生地作りの後は一次発酵が短時間です。そのおかげもあって生地の柔軟性に優れ傷みにくく扱いやすい生地です。機械製造ではこの柔軟性が非常に助けになります。

「中種法で作るとパンがしっとりする」コレ実は誤解!?


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パンの教科書なんかで紹介されている中種法は、中種を4時間常温で発酵させる製法のものが基準である場合が多いです。

一方でその対比として挙げられているストレート法は長くて2時間発酵のもの。

確かにこの比較だと中種法の方がしっとり感や老化耐性で勝っていると言えます。

しかし、中種法と一言で言っても様々な製法があり、中種1時間発酵のレシピもよく見かけます。この場合の中種法はしっとり感・老化耐性はストレート法と大して変わりありません。

「中種法だから老化が遅くなる」のではなく、単純に生地時間(注1)が長いほど粉のでんぷんの水和が進み老化が遅くなるだけです。

なので極端なことを言えば、常温30分発酵の中種法とオーバーナイトのストレート法を比較すれば、後者の方が圧倒的に老化は遅いでしょう。生地時間が桁違いに長いからです。

(注1)生地時間…粉と水を混ぜ合わせてから焼成で「パン」になるまで、それが「生地」としてこの世に存在している時間のこと。僕が考案した造語です。

中種法で作るデメリット

  • 素材の風味が薄れる
  • 工程の手間が増える
  • 中種の発酵スペースが必要

「中種法で作るとパンが劇的に美味しくなる」

なんてイメージでとらえている方も多いかと思いますが、それは大きな誤解です。

そのような魔法の製法は残念ながらありません。どんな製法にも長所と短所があり、目的に応じたベストな製法の選択をするのが重要です。

 

中種法をはじめとした発酵種法は基本的に素材が本来持っているフレッシュな風味は弱くなります。

特に中種法では粉の風味が弱まる傾向にあります。ストレート法と比較すると焼き立ての香ばしさで明らかに劣っていることがわかります。

中種に使う粉の割合は?

中種に使う粉の割合は、教科書などで紹介されるオーソドックスな中種法だと使う粉の7割を中種用に、残りの3割を本生地作りで加えます。

ですがこの割合に正解は無く、5割を中種にする人もいれば全量を中種にして本生地作りでは粉以外の材料だけ加えるやり方もあります。

 

中種に使う粉の割合を変えると何が違う?

割合が大きいほど本捏ねで加える粉が少ないため、中種法のメリット・デメリットが両方とも強く反映されます。割合が小さいほど中種法の特徴が薄れストレート法寄りになるでしょう。

ストレート法と中種法の違い

ストレート法で作ったパンの大きな特徴は何と言っても素材(特に粉)のフレッシュな風味が活きていること。

一方で中種法のパンは素材の風味は薄れるため、比較するとどうしてもストレート法の風味には及びません。

「ストレート法だとパンが硬くなる」は大きな誤解

「ストレート法だとパンがカチカチになるから中種法で作ってみましょう」

というような文言をよく見かけますが、ストレート法でもふわふわしっとりパンを作ることは十分可能です。

「ストレート法だからカチカチになる」と思っている人は、そもそも作り方に色々と問題があるはずです。

なぜなら世の中のベーカリーで作られている食パンの多くはストレート法だからです。

(ベースはストレート法で、生地玉を数日分用意して冷蔵冷凍するなどして結果的にオーバーナイトにもなったりはします)


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このような勘違いをしている人の多くはこね不足だったり発酵不足であることが多いです。

中種法だと捏ね時間は短縮できる上に良い生地が作りやすいので、手ごねに不慣れで普段はこね不足の人でも中種法の時だけ上手に出来ている可能性もあります

そういった方の目線だと「ストレート法はカチカチになるけど中種法ならふわふわになる」と勘違いしてもおかしくありません。そしてそういった声がネット上に溢れてしまっているだけだと考えています。

 

ポーリッシュ法と中種法の違い

ポーリッシュ法で作る液種は、中種法で作る中種と同様にイーストを加えて事前発酵させるため、同じ「発酵種法」という大分類に位置する親戚のような製法です。

ですが焼きあがるパンの特徴は意外と異なります。

中種法は主にパンのボリュームや食感を向上させる製法と言えますが、液種法はより味そのものを向上させることが出来る製法と言えます。奥行きある発酵風味や旨味に関して中種法より優れています。

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中種法と湯種法の違い

湯種法は使う粉の一部を熱湯を混ぜ合わせて「湯種」を作ります。

中種と最も大きく異なる点としてイーストを加えないことが挙げられます。

中種や液種はイーストを加えて事前発酵させるため「発酵種法」という大分類の内の一つですが、湯種は発酵させないため発酵種法とは異なる製法です。

故に、その原理や特徴は全く違うと捉えるべきです。

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中種法と老麺法の違い

老麺法は既に完成しているパン生地を少量混ぜ込む製法です。

パン生地としては未完成な中種を本捏ねで混ぜ込む中種法とはその部分で少々違いがあります。

また、中種法では使う粉を中種用と本捏ね用に割合を分けて考える「内割」のレシピであることがほとんどですが、老麺法では基本的に使う粉100%に対して老麺を何%混ぜ込むかという「外割」のレシピがほとんどです。

以下が老麺法のレシピ例です。

材料 BP%
強力粉 100
イースト 1.2
砂糖 5
食塩 2
脱脂粉乳 2
70
油脂 5
老麺 10

老麺として使われる生地の多くは同じ配合の生地です。

老麺もパン生地ですから粉が含まれています。故にこのレシピだと実質的な粉量が100%を超えることになりますが、この場合の老麺は「調味料」的な考え方で扱うため、そのあたりを細かく調整したりする必要はありません。

パン屋さんでは余った生地を「古生地」として冷蔵庫に保管しておき、翌日の仕込みでついでに入れ込む手法をとることが多いです。この時に入れる古生地の量は全体からすればごく微量なので目立った効果は特に得られませんが、これもやっていることは老麺法と同じです。

 

2023/05/05

by BAKE FIRST(製パン科学研究家)