パン作りにおけるバターの役割について解説

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パン作りでバターはどんな役割を果たすのか?

パン作り バター 役割

パン作りのレシピで最もよくつかわれる油脂「バター」。

バターはパン作りの中では必須材料ではありませんが、油脂としての活用で非常に多くの効果を生地に与えます。

ここではパン作りにおけるバターの役割がわかるよう、油脂がパンに与える効果をプラスとマイナスに分けて解説します。

 

油脂がパンに与えるプラスの効果

伸展性の向上

油脂を加えた生地は伸展性が向上し、よりしなやかで伸びやすい生地になります。

それによって次のようなメリットが得られます。

  • より手の込んだ成型がしやすくなる
  • 膨らみやすさに繋がりパンのボリュームが大きくなる
  • 機械耐性が向上する(生地の傷みにくさ)

ですがこれらのメリットはあくまで油脂を適度な量、そして適切な方法で生地に練り込んだ場合にのみ得られます。

加え方や量によっては真逆の効果になることもあります。

パサつき防止

油脂を入れることでパンの保湿性が向上し、パサつきを防止できます。

お肌をオイルで保湿するのと同じですね。生地全体のグルテン膜やでんぷんを覆うように広く油脂膜が分布することで、それらからの水分蒸発をガードします。

歯切れを良くする

油脂を入れたパンと入れないパンの決定的な違いは歯切れの良さです。

以前、油脂無しで食パンを作ったことがあるのですが、噛み千切る際にムチっと歯が止まる感覚がありました。


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これをモチモチ感と捉える人もいるかと思いますが、歯切れが悪いとも言えます。

歯切れが悪いパン生地はサンドイッチや惣菜パンなど具材と一緒に食べる場合において食べづらさを感じます。

油脂を配合して歯切れを良くすることで、サンドイッチなど幅広い活用に向いたパンになると言えるでしょう。

油脂がパンに与えるマイナスの効果

グルテン結合の阻害

卵焼きを作るとき、油を使わないとフライパンにくっついてしまいますよね?

油全般には「くっつかなくする」効能があります。

これはパン生地の中でも同様で、ミキシングでのグルテン組織の結合を油脂膜が邪魔をしてしまいます

そのため一般的には油脂を最初から入れずに、体感で6~7割ほどの生地完成度になってから油脂を加えます。

こうすることで、油脂によるグルテン結合の阻害を避けることができ、丈夫で良く膨らむ生地を作ることができます。

(10割ほどの完成度で油脂を加えてしまうと、油脂を均一に混ぜる過程でオーバーミキシングになってしまう恐れがあるため安全策として6~7割の段階で加えます)

 

例外的に、あえてグルテン結合をさせずにより歯切れの良いパンを作りたい目的で油脂を最初から加える場合もあります。セミハード系のパンに多いパターンですね。

 

生地のコシ低下

油脂を加える事によるメリット「伸展性の向上」は、使用量が多くなりすぎるとコシの低下というデメリットになり得ます。

コシが弱くなることで特に上に高く膨らむ力が低下し、油脂を大量に加えた食パンではボリューム低下の傾向があります。

※ただしバター0%から多くなればなるほど徐々にボリューム低下するのではなく、ある程度まではコシを維持しつつも伸展性向上でプラスにも働き、40~50%など多すぎる配合によって膨らみが悪化します。

また、コシが弱くなるだけでなく保湿性も異常に高くなるため、同じ焼成時間だと生地の水分が保たれすぎて自重が重く、側面にしわが寄って「腰折れ」の現象に見舞われます。

パン作り 油脂 効果

側面にシワが寄って潰れている「腰折れ」(軽度)

ただし画像のような高級生食パンでの腰折れは、バターが多すぎるからではなく生クリームや糖分などが多い配合で焼成温度が低いなど複合的な理由からです。

といっても生クリームに含まれる乳脂肪で油脂分がかなり多くなっているので、バター多すぎと同じ状況ですけどね。

バターだからこそ得られるメリット

パン作りに使われる油脂は他にもショートニングやラードなど様々ですが、バターでしか得られない効果があります。

それはバターの風味です。

バターの香りは他の油脂では代用できない唯一無二のもの

マーガリンでもバターの香りを完全再現出来ているものは未だに無いため、配合量が多いパンだとやはり別物の香りになってしまいます。

もちろん何でもかんでもバターの香りを加えた方がいいわけではありません。毎日食べるための食パンなどはバター香が濃すぎると飽きの原因となるため好まれませんが、ショートニングとバターを半々でブレンドするなど絶妙な使用加減で上手く活用されることも多いです。

 

バターの有り無しでパンはどう変わる?

元々バターありのレシピをバター無し(油脂無し)で作ると、

  • 生地の伸展性が低下する
  • 引きが強く噛みきりにくいパンになる
  • 保湿性が低下する
  • 風味の変化が得られない

といった違いがあります。

 

おすすめのバターと選び方

パン作り バター オススメ

バターにも色々なメーカーのものがあり、値段も様々ですよね。

「やっぱり値段が高いバターを使った方がパンは美味しくなるの?」

と思う方もいるでしょうけど、実際はそうではありません。

バターに何を求めているのか、その目的と選んだバターの特性が一致していなければ、例えお高いバターを選んでも理想から離れてしまいます。

ではどうすればいいのか?

  1. それぞれのバターの風味を理解する
  2. パンにどんな風味を与えたいのか考える
  3. その目的を達成できる個性のバターを考える

このような思考手順で選べば理想の風味に最短でたどり着けます。

こちらの動画でよりわかりやすく解説しているのでぜひご覧ください。


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有塩バターで代用できる?

「パン作りでは無塩バターを使わないといけない」

なんて思っていませんか?

実は有塩バターでも十分代用できます。

ですが一つ注意点があります。それは有塩バターに含まれる塩分量。

メーカーによって多少の誤差はありますが、有塩バターには1.5%の塩分が含まれています。

そのため無塩バターを有塩バターにただ置き換えただけだと、塩の分量が余計に多くなってしまい発酵力や生地感に影響が出てしまいます

ここで簡単なレシピの換算方法をご紹介します。

 

(例)粉100% 食塩2% 無塩バター20%のレシピの場合

無塩バター20%→有塩バター20%にそのまま置き換え

有塩バター20%に含まれる塩分量は

20%×0.015=0.3%

レシピの食塩量を調整する

2%-0.3%=1.7%

結果、粉100% 食塩1.7% 有塩バター20% となりました。

 

これだと食塩0.3%分はミキシングの後半でバターと一緒に入れることになるけど、塩を入れるタイミングがズレることは問題ないのか

違いが全くないわけではありません。

ですがフランスパンなどでは「後塩法」という製法がよく使われており、生地伸展性の向上やミキシング時間の短縮、発酵力阻害効果の軽減など、様々なメリットがあります。

なので理論上も特に問題はありませんし、0.3%分だけが後塩になるくらいならそんなに大きな体感変化も無いので安心してください。

少しでも安く作りたい!そんな時はぜひ有塩バターでの代用も視野に入れてみてください。

 

※この計算方法だと厳密には0.3%分の脂肪分が不足することになります。

より正確に作りたいなら、有塩バターの塩分以外の成分を100-1.5=98.5%として

20%÷0.985=20.304≒20.3%(有塩バター使用量)

20.3×0.015=0.3045≒0.3%(余分な塩分量)

食塩2%-0.3%=1.7%

結果、食塩1.7% 有塩バター20.3% という計算になります。

業務製造ならこの違いが分量の大きな差に繋がりますが、ご家庭で作る程度なら大した差にならないのでどちらでも構いません。

 

その他のバター代用品

マーガリンで安くパンを作ろう!

パン作り バター 代用 マーガリン

無塩バターを有塩バターに代用すれば安く作れる。

それでも有塩バターもやっぱり高い!もっと安く作れないか?

そんな時はマーガリンでの代用という手段もあります。

業務用マーガリンには製菓製パン用に無塩マーガリンがあるのですが、スーパーでは中々入手できないですよね。

その場合は先程解説した無塩バターから有塩バターへの代用換算法をマーガリンでも応用しましょう。

こちらも塩分量はメーカーや商品ごとに微妙な差があるため、必ず成分表示で塩分量を確認して計算しましょう。

(100gあたり1.5gと書いてあれば、そのマーガリンの塩分割合は1.5%ということになります)

オススメはバターがブレンドされているものです。その方がよりバターとの香りの差が縮まります。

 

ケーキ用マーガリンはパン作りに使える?

ケーキ用マーガリン」という無塩タイプならスーパーでも頻繁に見かけますが、これはオススメしません

無塩なので面倒な計算なく使いやすいのですが、バターっぽい香りというよりもホットケーキミックスのような甘ったるく主張の強い香りなので、パン作りにおけるバターの代用としては不適切に感じます。

 

ファットスプレッドでの代用は可能か?

パン作り バター 代用

引用:https://www.meg-snow.com/products/detail.php?p=neosoft

 

スーパーのマーガリンコーナーに置いてある「ネオソフト」や「コーンソフト」といった圧倒的に安い商品、実はマーガリンではなくファットスプレッドです。

ファットスプレッドとマーガリンの主な違いは脂肪分の割合で、80%以上ならマーガリン、80%未満ならファットスプレッドと表示しなければなりません。

つまり、脂肪分を少なく安価にする代わりに脱脂粉乳やバターミルクなど様々な食材や香料を用いてなんとかマーガリンに寄せて製造されているもの、それがファットスプレッドだと捉えればわかりやすいでしょう。

そんなファットスプレッドですが、一応代用は可能です。

実際にスーパー併設のベーカリーなど安価なお店では成分表示にファットスプレッドの記載を見かけることも多いですね。

ですが、バターの代用として全量を置き換えての使用はあまりオススメできません

あくまでマーガリンに寄せて作られているものなので、バターとは風味に雲泥の差があるからです。

特にバターロールのようにバターをたくさん使うレシピで全量ファットスプレッドにしたら、香りがいかにも香料って感じであまり美味しく感じられないでしょう。

バターを使わないにしても、メインの配合はマーガリンにしてファットスプレッドはサブでブレンドするような形が無難かと思います。

 

ファットスプレッドを使う場合は、厳密に作るなら塩分量だけでなく脂肪分や水分量の調整もした方がいいです。

調整の順番としては

  1. 脂肪分の量が同じになるファットスプレッド使用量を計算する(バター10gイコール脂肪分10gではありませんのでご注意を)
  2. 使用量に含まれる塩分量を計算し、レシピの食塩から差し引く
  3. 使用量に含まれる水分量を計算し、レシピの吸水から差し引く

そこまで考えるのは難しいですか?

この計算手順を見てパッと計算できないのであれば、無理にファットスプレッドを使うためにレシピアレンジすることはおすすめできません。

そもそも風味は間違いなく劣ってしまう代用ですから、安さばかり追い求めて複雑な計算に頭を悩ますのは手作りの醍醐味とはかけ離れているはずです。