パン作りではまだまだ歴史は浅いけれど、料理の世界においてはその効能が広く認知され始めているアルカリイオン水。
アルカリイオン水を使ったパンといえば銀座に志かわが有名で、2018年からずっとオンリーワンの存在でしたが、どうやら他にもアルカリイオン水を使った食パンを製造するお店が現れ始めたようです。(名前を忘れてしまいましたが…知ってる方いたら教えてください!)
パンの世界でも徐々にアルカリイオン水の良さが注目されつつある割には、高級食パン以外でアルカリイオン水を使ったレシピはなかなか検索してもヒットしない。
まだまだ未開の地である印象が強く残っているので、このブログでは率先してその道を開拓していこうかと考えております。
だって、気になるでしょ?私はめっちゃ気になりますよ(笑)
そこで、せっかくなので上手くいったものに関しては、皆さんにも後を追って作っていただけたら幸いですので、こねはホームベーカリーにまるっとおまかせを前提として、なるべく作りやすい方法で探っていきます♪
今回はその第一弾として、ザ・基本の食パンを作ってみました!
コンセプト
アルカリイオン水による製パンへの影響をよりわかりやすく体感するために、いわゆる「ニコニコ配合」(BP%に2と5が点在する配合)で検証してみました。
~~こんな材料でやってみました~~
配合(1斤分 正方形)
材料 | BP(%) | 重量(g) |
---|---|---|
強力粉(カメリアなど) | 100 | 250 |
上白糖 | 5 | 12.5 |
食塩 | 2 | 5 |
スキムミルク | 2 | 5 |
セミドライイースト金 | 1.2 | 3 |
アルカリイオン水 | 70 | 175 |
無塩バター | 5 | 12.5 |
合計 | 184 | 460 |
今回、イーストはこちらの使用をオススメします。
ビタミンC(アスコルビン酸)が無添加であることを理由にチョイスしています。
アスコルビン酸は生地のpHを少し下げてしまうため、今回のアルカリパン検証には不適合と判断したためです。
~~レシピの意図と注意点~~
工程の意図と注意点
発酵オーバーで味が顕著に劣化してしまうので、気をつけてください。
特に、二次発酵の終盤では発酵スピードが通常の水で作るパン以上に早くなっている感覚があります。追加発酵はこまめにチェックしながら慎重に。
~~このような工程でやってみました~~
ミキシング
- バター以外の材料をケースに入れ、手動のこねモードで15分ミキシング。
- バターを加えて、再度15分ミキシング。
- 生地を手粉を振った作業台に出して、生地にも軽く手粉を振る。
- 手のひらで生地を押さえて生地をすこし伸ばし、手前1/3、奥1/3を折って三つ折りし、手のひらで押さえる。
- 90度ずらして同じように三つ折りして押さえる。
捏ね上げ温度の目安…27℃
一次発酵・分割丸め・ベンチタイム
- 27℃ 20分の一次発酵。
- 生地を伸ばしつつ三つ折りにするような感じでパンチをする。
- 27℃ 25分の再発酵。
- 二等分にする。
- 生地を丸めて15分のベンチタイムをとる。
成形・二次発酵
- 生地に軽く手粉を振り、手のひらで軽く押さえてガスを抜く。
- めん棒で縦にのばす。
- 裏返して手前1/3を折り、奥も1/3折る。
- 端に出てきたガス溜まり気泡は軽く叩いてつぶしておく。
- 生地の表面にハリが出るように巻いていく。
- 型に詰めて38℃ 35分の二次発酵。
- 10分間発酵室から出して表面をほどよく乾燥させる。このとき生地表面に目立つ薄膜の気泡がある場合は竹串やはさみで潰しておく。特に四隅の気泡に注意!
焼成前加工・焼成
- 天板ごとオーブンを210℃に予熱しておく。
- フタをして190℃ 10分➡210℃ 18分焼成。
- 型ごと落としてショックを与え、熱いうちにケーキクーラーの上にパンを出して粗熱を取る。
検証結果・感想
生地感はやっぱり少しユルい!
極めてオーソドックスな配合の生地なので違いがよくわかりましたが、やっぱり生地は普通の水で作るよりもユルくなります。
とはいえ、決して扱いづらいユルさではなく、むしろ伸びが良くて弾力もすぐに落ち着く扱いやすい生地だと感じました。
この配合の食パンならベンチタイム20分は欲しいところですが、15分で十分済んでしまいます。
発酵は決して遅くはない、むしろ早い!?
本来、酵母菌は弱酸性の環境で活発に働くものです。なので、アルカリイオン水は酵母菌の活動にふさわしくないというように言われてきました。
当然私もそのように教わっていました。しかし、どうやらその限りではないようです。
一次発酵の前半20分はそこまで膨らみはしないのですが、その後からは一気に早くなる印象がありました。
私の考察ではありますが、パンチをすると生地に酸素が供給されて発酵が早くなるのは当然のことなのですが、普通の水で作った生地だと同時に生地の骨格(グルテン)まで強化されてしまうので、一旦コシがついて膨らみにくさが邪魔をするんですよね。
例えるなら、風船を膨らませる人はプロのトランぺッターに変わるけど、風船そのものはより硬く伸びにくいものに変わる…みたいな?
しかし、アルカリイオン水の場合はパンチによってグルテンが強化されても、ついたコシがすぐにユルむため、まるで事前に手で伸ばした柔らかい風船のごとく膨らませやすくなるんですよね。
だからプロのトランぺッターが膨らませやすい風船に空気を入れるようなものなのです。
丸め後も、成形後も同様にすぐ膨らませやすくなる。
だから、たとえ酵母菌の活動自体は活発にならなくとも、物理的に膨らみやすいという点があるからちゃんと発酵はするのではないでしょうか?
多分、酵母菌が死んでしまうほどの高いpH数値のアルカリ水を使ったら、生地も手も溶けたり、飲むことすら危ないのではないでしょうか?やったことないからわからないけど。
ちなみに、酵母で作られるワインだってアルカリ性だよね!って思って調べてみましたけど、ワインそのものは酸性とのこと。ただ、含んでいる栄養素のせいで体内ではアルカリとして働くそうです。
食感は引きが弱く、しっとり口溶けが良い!
普通の水で作った同配合の食パンより引きが弱いため歯切れがよく、口溶けが良かったです。
恐らく、アルカリイオン水で仕込んだ生地は、生地の骨格であるグルテンが軟化するので、焼き上がったパンがそのようになるのではないでしょうか?
実際、たんぱく質量の少ない粉でパンを作ると、引きが弱く歯切れが良くなります。
さらに、もっと水の多いの配合で作ったかのようなみずみずしさがあり、内相(パンの中身)もつやつや輝いています。
一度、発酵オーバーでフタが出来ず山食で焼いたのですが、気泡が粗い分その艶やかさが目立ちました。
個人的には加水90%ぐらいの食パンを作った時に得られる感覚を思い出しました。
アルカリイオン水には普通の水よりもでんぷんをα化(糊化)する能力が高いという特徴があるため、焼き上がったパンもでんぷんα化率が高くなる。でんぷんが水分をよく吸ったわけだから、老化が遅くなる。結果、口溶けの良さとしっとり感に良い影響を与えたのでしょう。
アルカリイオン水の特徴についてはこちらで詳しく解説しています。
味と香りに関して…
香りは心無しか普通の水で作る食パンよりも若干香ばしく感じましたが、プラシーボ効果のせいかもしれません。今後も検証を重ねていきたいところではあります。
また、味わいに関してですが、発酵熟成を長時間おこなっているわけではないため、発酵風味や奥行きのある味わいはそこまで期待できません。これはアルカリイオン水に限らず短時間で作るパンは同様の特徴があります。
ですが、そのかわりに素材のフレッシュな風味がダイレクトに活かされるので、風味の良い国産小麦を使えば、味わいもかなり化けるポテンシャルを感じました。
高級食パンでもそうですが、アルカリイオン水で作るパンは総じて味がクリアーな印象があります。
まとめ
アルカリイオン水でのパン作りは、素材の風味を存分に活かしながらも、高加水パンのようなみずみずしさと口溶けで自然な甘みを感じることができる画期的な製法だと感じました。
皆さんもぜひ一度、アルカリイオン水でのパン作りに挑戦してその効果の程を体感してみてください!
以上、アルカリイオン水でつくる基本の食パンの検証レシピ紹介でした!
byなおちゃん
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