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こんにちは!"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ
前日に生地を作って、当日の作業時間が少なくて済むオーバーナイトでのパン作りは近年ご家庭でも流行っていますね。
ですが、パン作りの基本原理が意外と正しく知られていないために過発酵(発酵オーバー)でお悩みの方も多いです。
ここではオーバーナイト法でパンを作る際に、過発酵させないために必要な基本原理と対策を解説します。
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もうオーバーナイトで過発酵させない!パン作りの基本原理とは?
パン作りで重要な温度はたった一つ「〇〇の温度」
意外と皆さん見落としがちな概念なのですが、パン作りで重要なのは粉温でも水温でも室温でも、捏ね上げ温度でもありません。
これらはあくまで最も重要な〇〇温度を適正に保つための目的に過ぎません。
その温度とは何か…?
「生地の温度」です。
もっとわかりやすく言うと、「今、目の前にある生地が何℃なのか?」です。
発酵が進むか止まるか、遅いか早いか、それは室温によって決まるわけでもなく、発酵室の温度で決まるわけでもありません。
あくまで生地の温度がその時何℃なのか、それ次第です。
「発酵器から出したら発酵が止まる」と思っている方も多いですが、それこそ間違いで、生地が焼成されて酵母菌が死滅するか冷凍して活動が止めなければ発酵はノンストップです。
逆に、例え捏ね上げ温度をレシピ通り27℃に仕上げられたとしても、室温があまりに低くその後に生地が冷やされて15℃になってしまえば、その生地は15℃の発酵レベルでしか発酵が進みません。仕込み水温の計算も水の泡です。
故に、「今、目の前にある生地が何℃なのか?」が最も重要なのです。
オーバーナイト法の何が難しいのか?
一般的な冷蔵室の温度は低い場所で5℃です。酵母菌は基本的に4℃以下で休眠する傾向がありますが、冷蔵室ではゆっくりではあれど発酵がじわじわと進んでしまいます。
さらに、庫内の場所によっては5℃よりも高い温度となりますし、お使いの冷蔵庫の型式や品質であったり、様々な要因で庫内の冷え具合も変わってきます。
これがオーバーナイトが難しい一つの要因です。
もう一つ最も重要なの要因があります。
それは、生地を冷蔵庫に入れてスグに生地が冷え切るわけではないということ。
単純な話、27℃の生地を冷蔵庫に入れた瞬間、まだ生地温度は27℃です。たとえ冷蔵庫が5℃だとしても、しばらくは生地温度が高い状態が続くということです。
生地が冷え切るまでどのくらいの時間がかかるのか、それがわかりづらいために庫内でどれだけ発酵が進んでしまうのか予測しづらい。
これこそがオーバーナイト法では過発酵になりやすい原因です。
オーバーナイト法の過発酵対策
捏ね上げ温度を下げる
冷蔵庫に入れる前の生地温度が27℃の場合と24℃の場合で比べたら、どちらが先に5℃まで冷え切るでしょうか?
考えるまでもなく後者ですよね。
その日のうちに焼き上げる一般的なレシピだと27℃が基本的な捏ね上げ温度として指示される場合が多いですが、オーバーナイトの場合は安全策として捏ね上げ温度を低めにすることをおすすめします。
「具体的に何℃にすればいいの?」
これは作るパンや使う材料、その配合など様々な要因で最適解が変わってくるので一概に言えるものではありません。
ですがこれまで捏ね上げ温度を特に気にせず作ってきて過発酵が気になっているようなら、次からは捏ね上げ温度を低めに試してみると良いでしょう。
一次発酵の時間を減らす
<オーバーナイトではない通常の製法で一次発酵が60分のレシピ>
これをもしオーバーナイトに置き換えて作るのであれば、一次発酵をかなり短くしなければいけません。
レシピ通り60分常温で発酵させた後に冷蔵庫に入れるようでは完全に過発酵になります。
「どれくらい減らせばいいのか?」
これも結局、レシピの配合や作るパンによって大きく変わってくるので一概に言えませんが、少なくとも一次発酵が60分のレシピの場合だと粉量200gの大きさでも10分以下で十分です。
粉量があまりに多すぎると常温での一次発酵すらいらない可能性もあるでしょう。
そのあたりはまず実際にやってみて、その結果を元に次回調整するしかありません。
生地を分割する
例えば粉量300gを超えて作るような場合、生地が大きすぎて冷え切るまでかなりの時間を要します。
それで過発酵になっているようなら、試しに生地を小分けにしてから冷蔵庫に入れてみてください。
生地のサイズが小さくなるだけで冷え切るまでの時間がかなり短縮されるため、過発酵のリスクが大幅に減ります。
冷蔵庫の入れる場所を考える
冷蔵庫内は場所によって冷え具合にムラがあります。
メーカーや型式によってどこが一番冷えるか違うので一概には言えませんが、最もよく冷える場所を探してそこで生地を寝かせることで過発酵を防ぐことが出来る場合があります。
また、電力調整ツマミがある冷蔵庫もありますから、一度どのくらいの設定になっているのか確認してみると良いでしょう。夏に最弱設定だと過発酵のリスクはかなり高くなります。扉の開け閉めが多い家庭でも庫内温度は高くなりがちです。
最悪、チルド室を使う
冷蔵室の中にチルド室はありますか?
チルド室は主に0℃ですから、生地が凍らないけど発酵は止まる絶妙な温度帯で、パン屋さんでもかなり重宝する温度です。
もし冷蔵庫に入れて数時間後にチラっと生地を覗いた時に「なんか結構膨らんできたな…ヤバイ」と思ったら、チルド室に移しましょう。
0℃あたりまで生地が冷え切ってくれればそこで発酵は止められるのでかなり便利です。
野菜室でのオーバーナイトは危険?
元から野菜室でオーバーナイトさせる前提で作られたレシピであれば、レシピの指示通り作れば問題ないでしょう。
しかし、野菜室は10℃近辺ですから、常温ほどではないにしろ、発酵が結構進みます。
そのため次の作業に移るべきタイミングのストライクゾーンが意外と狭く、オーバーナイトの持ち味である時間の融通があまり効きません。
(冷蔵室オーバーナイトなら24時間の誤差があっても作れる場合があっても、野菜室では数時間のズレで過発酵になる)
結局、発酵時間を管理しないといけないので、「前日の何時から生地作って、この時間に寝て…」と考えなければなりません。
なので野菜室でオーバーナイトさせるのはラクさを求めるならあまりオススメしません。
※自家製酵母を極少量配合して作る、いわゆる志賀勝栄さんスタイルのパンであれば、酵母量が少ないため野菜室でもストライクゾーンは広くなります。これはあくまで一般的なパン作りにおける解説です。
イーストの適正量は?
「オーバーナイトで作る時は、元のレシピのイースト量を1/3にすればいいんですか?」
という質問をよく見かけます。
確かにイーストを減らすことで生地が冷え切るまでの間に進んでしまう発酵を少なくすることは可能ですが、さすがに1/2や1/3まで減らしてしまうと翌日の工程時間がかなり長くなってしまいます。
最終発酵の時間が2~3倍以上に跳ね上がります。仮に分割丸め後に長時間かけて復温したとしても、イースト量が半分以下になっているわけですから最終発酵時間が2倍程度になる可能性が高いです。
オーバーナイトで楽して作りたい人にとって、それだと本末転倒に思えます。
なので、イーストを極端に減らすよりも、先述のような工夫によって過発酵を防ぎ、それでも足りないようならイーストを少量減らす、という最終手段として考えた方が無難かと思います。
色々なオーバーナイトのタイミング
分割丸め後のオーバーナイトが一番ラクで安全!?
短時間の一次発酵の後に冷蔵庫に入れて、翌日分割丸めから作業を開始する…
この手法は「一次発酵という長い発酵時間を寝ている間に済ませられる!」というニーズからお家でのパン作りレシピで多く見られる手法でした。
しかし、ここまで述べてきたように捏ね上げ温度や生地の大きさなど様々な要因で発酵の進み具合が左右されてしまうため、意外と難しさのある手法と言えます。
ですが、元のレシピ通り(あるいはやや短め)の一次発酵をさせて分割丸めをしてから冷蔵庫に入れる手法であれば、過発酵のリスクが大幅に少なく、難しいことも考えずラクに作ることができます。
250gの生地と40gの生地玉、冷蔵庫に入れた後どっちが早く冷え切りますか?
後者の方が圧倒的に早く冷え切りますよね。
それだけで過発酵のリスクは激減です。
そして復温で生地が暖まるまでの時間も同様に早い。ベンチタイムと復温を兼ねることが出来る。
パン屋さんでは分割丸め後にリターダーという0℃の生地用冷蔵庫に入れて、生地玉として2~3日分をストックしておきます。これもれっきとしたオーバーナイトですが、0℃なので発酵が進むこともなく、生地も凍っていないのでスグに成形することもできる。(効率上、復温しない職人さんも結構多いです)
難しいこと考えずにラクに作りたい人は、ぜひ分割丸め後のオーバーナイトでやってみてください。
二次発酵をオーバーナイトにするのは全く別物
最近では二次発酵をオーバーナイトにして翌日焼くだけ、みたいなレシピも多く見かけるようになりました。
あさイチで焼きたてが食べたいニーズに合わせたレシピですが、実はこれが一番クオリティ高く作るのが難しかったりします。
そもそもレシピの粉の配合から変えなければ仕上がりが大きく変わってしまったりする恐れがあるからです。
この手法のコツについてはまた別の機会に解説記事を書きますが、過発酵対策を挙げるとすると「成型後スグ冷蔵庫に入れる」です。
先述のように生地は冷蔵庫に入れた瞬間に冷え切るわけではありませんから、もし元のレシピ通り38℃で50分のしっかり発酵をさせた後に冷蔵庫でオーバーナイトさせたら、そこから更に発酵が進んで完全なる発酵オーバーになってしまいます。
これだと膨らまない、どころか既にしぼんでしまっている可能性もあるでしょう。
焼き色も薄く、糖分も完全消費され甘味が薄く、アルコール臭までして美味しくない、など様々な弊害に見舞われてしまいます。
オーバーナイト法でふわふわに焼くコツとおすすめレシピ
オーバーナイト法のコツやおすすめレシピについてはこちらの記事で解説しています。
まとめ
オーバーナイト法は利便性だけでなくパンの保湿性を高めることにも役立つ製法です。
発酵具合の管理さえうまくできれば非常に便利な製法なので、しっかりマスターしましょう!
2023/05/25
by BAKE FIRST(製パン科学研究家)