パンの一次発酵で膨らまない?原因と対処法を解説!【イースト2倍はダメ】

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こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ

「パン作りの発酵で生地がうまく膨らまない…」

そんな状況に陥ったことありませんか?

この時に「イーストを2倍にする」なんて対策をとってしまう方も多いようですが、大きな間違いです!

パン生地が発酵でうまく膨らまなくなる原因はいくつもありますが、それを正しく理解していないと間違った対策をしてしまう恐れがあります。

今回はパンが発酵でうまく膨らまない原因と正しい対処法について解説します。

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発酵で膨らまない原因と対処法

パン作りの発酵工程で思うように膨らまない時、様々な原因が考えられます。

ここではその原因と対策を解説していくので、上手く行かない時には一つずつチェックして、可能性がありそうなところから改善してみてください。

計量ミス・入れ忘れ

  • イースト
  • 砂糖

特にこれらの計量ミスが生地の発酵速度に影響を与えます。影響度の高い順に並べました。

イーストが少なければ当然遅くなりますし、塩が多すぎると抗菌作用で遅くなります。

砂糖を使うレシピで砂糖を入れ忘れれば後半での発酵力が低下する恐れがありますし、逆に多く入れすぎてしまっても発酵力を低下させる場合があります。

そしてお家でのパン作りのように少ない生地量で作る場合、イーストや塩の0.5gの誤差は意外と大きな割合誤差になってしまうので、0.1g単位で正確に計量することをオススメします

(脱脂粉乳は常識的な使用量の範囲内であれば支障をきたすほどの発酵誤差はありませんが、粉100に対して14%入れるといった大量配合だと、乳成分の作用で発酵力はかなり低下します)

パンの材料を正確に計れるオススメのデジタルスケールはコレ!

0.1g単位のデジタルスケールは各メーカーから様々な商品が販売されていますが、僕が今まで使ってきた中で最もオススメできるのはこちらの機種です。

同じタニタでも0.1gスケールは多数ありますが、この機種は精度が非常に正確です。

0.1g単位で重さを表示できるからといって、精度が悪ければ意味がありません。

僕はこれを6年前に購入したものを今でも現役で使用しています。お値段は高く見えますが今後も使い続けることを考えたら既にお釣りが来ていると言えます。

仕上がりの安定しないパン作りから一転、常に美味しいパンが出来るようになったのもこれを使い始めたことがキッカケでした。

きっと皆さんもこのスケールを手に入れたら、急にパン作りが上達した気分になれるはずです。

 

酵母の発酵力が低下・不足している

使っている酵母は新鮮ですか?

開封後かなり時間の経過したイーストや、保存方法・保存環境が悪いとイーストの活性が低下して、生地の発酵力も弱まってしまいます。

適切な保存方法を心掛け、どうしても使い切るのが遅くなってしまうようなら、イーストを増やしたり発酵時間を延長したり、ある程度の調整をしながら作る必要があります。

水不足・粉多すぎ

ミキシングの最中に、生地がベタつくからといって粉を加えてしまっていませんか?

あるいは、ベタつくのが嫌だからといって水を最初から減らして作っていませんか?

そういった行為によってレシピ本来の配合割合から大きくズレてしまうと、想定より硬い生地が出来てしまいます。

生地が硬いと、発酵が遅くなるというよりも酵母菌が中から生地を膨らませるのがすごく大変になるため、膨らみが遅くなります。

新品で硬くて膨らませにくい風船をそのまま無理やり膨らませるようなものです。

手で伸ばして予め柔らかくしたほうが膨らませやすいですよね?パン生地も同じです。

このケースのように生地が硬い場合、発酵が遅いわけではなく見た目の膨らみよりも中身では発酵が結構進んでいたりするので注意が必要です。(もちろん、生地中の自由水が少ないため発酵力低下の影響もありますが…)

 

「そうは言っても、ベタベタしちゃ捏ねられないよ!」

と思ったのであれば、それは捏ね方が間違っているかもしれません。こちらのページで正しい捏ね方を解説しているのでぜひご覧ください。

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あるいは、使っている道具が良くないのかもしれません。

手ごねの時、シリコンマットを使ってはいませんか?

僕も昔は使ったことありますが、あれはオススメできません。生地がマットを持ちあげちゃうので全く作業になりません。

逆にシリコンマットで手ごねが出来るように粉を増やせば、やはり水不足の生地となって美味しいパンからは遠ざかります。

オススメは程よい重量感のある大理石の捏ね台「まーぶるめん台」です。

 

滑り止めのグリップもついておりかなり激しい手ごねでも安定し、重さもあるため生地が持ち上げてしまうこともありません。

木製のペストリーボードと違って表面にキズもほぼ付かないため衛生的です。

お手入れはドレッジカードで生地や粉をかき落としてふきんで吹き上げるだけで良いので、重くて洗うのが大変という悩みもありません(さらにアルコールを霧吹きすればGood!)。

僕が手ごねでパン屋レベルのパンが作れるのも8割はまーぶるめん台のおかげと言えます。

まーぶるめん台や他のこね台についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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実際の使用感やメリット・デメリットをご紹介していますので、こね台の購入や見直し検討の参考にしてください。

 

 

ガス保持力が不足している

生地の中で発酵は進んでいるけれど、生地のガス保持力が弱いためにガス漏れして、実際のガス発生量ほど生地が膨らんでいない状況だと発酵が遅く見えます。

小さい穴が開いている風船を膨らませているのと同じ状況です。

生地のガス保持力に影響を与える要因は様々です。

  • 粉のグルテン量が少ない
  • こね具合が足りない
  • 豆乳やココナッツミルクなどを使用している
  • ココアや抹茶など小麦粉以外の粉物を使用している
  • 発酵オーバーで生地の過軟化
  • 熟成オーバーで生地の過軟化
  • 水の硬度が低すぎる、または高すぎる
  • 生地のpHが低すぎる、または高すぎる

生地のガス保持力についてより詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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pHが不適切になっていないか?

パン生地はpHの影響を大きく受けます。

「弱酸性だと発酵が活性化する」

というのは聞いた事がある方も多いかと思いますが、影響は発酵力だけではありません。

生地のpHが酸性に近づくほどグルテンは締まり、アルカリ性に近づくほど柔軟性が増します。

弱酸性であればグルテンは程よく丈夫になる事で生地のガス保持力が増し、より大きなボリュームに焼き上がります。

しかし酸性に傾きすぎるとグルテンの柔軟性は完全に無くなり生地がブチブチと切れるようになります。

レモン汁や酢を使うレシピもよく見ますが、少量の誤差でもpHが大きく狂うため、正確な計量が必須です。

また、発酵が進みすぎて強い酸性になってしまった中種や液種などの発酵種を使うと、本捏ねで生地が繋がらず、アルコール臭がキツい酸っぱいパンになります。

 

僕の体験談ですが、赤いパンを作ろうと「ハイビスカスパウダー」を使用したところ、酸性に傾きすぎて生地がブチブチ切れてしまいました。

情報の少ない食材を使う場合にはpHに注意しなければいけないと学んだ失敗でした。

 

生地の温度が低くなりすぎた

仕込み水温を綿密に計算して捏ね上げ温度をこだわって作れる方は多いでしょう。

しかし、捏ね上げ温度だけ適切に出来たとしても、その後の分割丸め・成形などで生地が冷えてしまうと、その後のベンチタイムや最終発酵での発酵速度は当然ながら遅くなります。

生地は小さければ小さいほど、あっという間に室温の影響を受けます。

(マグカップのお湯とお風呂のお湯、どちらが早く冷めますか?それと同じです)

特に冬にお家でパンを作る場合、お部屋の温度を25℃まで上げておくのもなかなか難しいでしょう。

室温管理が難しいのであれば、生地が冷えてしまうことを見越してベンチタイムで暖かい発酵室(オーブンの機能でOK)を利用したり、プラマイゼロにするイメージで工夫することが重要です。

僕なら冬はベンチタイムもオーブン発酵機能を使います。30℃設定か、あまりに部屋が寒すぎて生地が冷え冷えになったら35℃を使うこともあります。

ここに正解はありません。お風呂で発酵させるも良し、コタツで発酵させるも良し。とにかく工夫次第です。

 

イースト2倍の対処法がなぜダメなのか?

インスタントドライイースト

イーストはパン生地を膨らませる材料とも言えますから、

「前回うまく膨らまなかったから、今回は2倍にしてみよう!」

と思ってしまうのも無理はありません。

ですが、もし前回の失敗原因がイースト量ではなくたまたま生地温度が低すぎたことだったとして、次に作った時に適正な生地温度になった場合、今度は発酵が進みすぎてしまいます。

イーストの量は1.0%を1.2%に増やしただけでも発酵時間が30分は短縮されます(注1)。

たったの0.2%の差で30分も変わるのですから、二倍になんてしたらとんでもないことになりますよね。

過発酵になってしまった生地は甘味が減り味がぼやけ、焼き色も薄く風味も弱いなど様々な欠点が目立つパンになります。最悪アルコール臭さを感じる生地になることも…

またパン生地は抱え込めるガス量に限界があるため、特にホームベーカリーなど基本放置で作っていると、気付かないうちにその限界に達し生地が萎む可能性もあります。

仮に運よく上手に作れたとしても、イースト臭の目立つパンになってしまい不快に思われる方も多いでしょう。

 

(注1)…インスタントドライイーストの場合、基本的な食パン配合生地だとイースト1.0%で一次発酵90分、1.2%で60分という目安があります。あくまで目安でありレシピ開発者の意図によっては前後します。

生地が膨らむメカニズムを正しく理解して失敗を防ごう!

パン 発酵 膨らまない

パン作りの3大要素というのを聞いたことがありますか?

  • 温度
  • 時間
  • 重量

このうち「温度」が生地の発酵に大きく影響するというのはなんとなくわかっている方も多いでしょう。

では、その温度って何の温度のことを指すと思いますか?

  • 粉の温度?
  • 仕込み水の温度?
  • お部屋の温度?
  • 発酵器の温度?

違います。正解は「生地温度」です。

正確に言うと、製パン工程全体におけるその時の生地温度です。

パン作りにおいてはあらゆる解説で「生地が発酵する」といった表現がされますが、これはわかりやすく説明しているだけで実際に発酵しているのはイースト(酵母菌)です。

生地はあくまでイーストの発酵によって内側から膨らませられているだけです(まるで風船のように)。

イーストの発酵速度は環境の温度に左右されます。イーストは生地の中に生息しているので、この場合の環境温度というのは生地そのものの温度です。

室温が32℃であっても生地温度が25℃ならイーストにとっては今は25℃の世界ですので、25℃の発酵速度でしか活動しません。

逆に生地を冷蔵庫に入れたとしても、入れた直後でまだ生地温度が27℃ならイーストにとってはまだ27℃の世界ですので活発に発酵できます。

上記4つの箇条書きの温度というのはあくまで生地温度をコントロールするための一手段でしかありません。

「いま、目の前にある生地の温度は何℃なのか」その概念を常に持っておくことがパン作りでは重要です。

このほかにも様々な要素がパン生地の発酵に影響を与えます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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まとめ

パン生地が発酵でうまく膨らまない原因は様々です。

その原因を上手く見極める力を身に着けることで、正しい対処法が選択できるようになります。

くれぐれも「膨らまないならイースト二倍にしちゃえ」なんてことだけはしないように!

 

2023/04/28

by BAKE FIRST(製パン科学研究家)