二次発酵で膨らまない?"レシピの落とし穴"と3つのチェックポイント

パン作りは酵母菌の発酵力を借りて膨らませているので、温度管理が命です。

もしあなたがパン作りで、レシピ通りの時間だけ二次発酵させたのにふんわり焼きあがらなかった場合、温度管理に問題があるかもしれません。

そして、パン作りで意識すべき温度はたくさんあります!

今回は、二次発酵をレシピ通り行ったのにパンがふっくらしない人がチェックすべきポイントを三つ解説していきます。

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捏ね上げ温度

捏ね上げ温度は全工程に影響を及ぼす

生地の捏ね上げた時点でどのくらいの温度になっているかどうかは、その後の工程すべてに影響してくるため非常に重要です。

プロ向けレシピには捏ね上げ温度が記載されていますが、世の中の多くのレシピには捏ね上げ温度が記載されていません。

基本的には多くのパンにおいて生地の捏ね上げ温度は27℃前後が理想とされています。

(一晩冷蔵させて作る場合や、フランスパンなど長時間かけて作る場合はもう少し低い温度となりますがここでは割愛)

この27℃という基本捏ね上げ温度の通りに生地を作ることができれば、その後の一次発酵、ベンチタイム、二次発酵も時間通りにやれる確率が高まりますが、温度がずれてしまうとすべての工程で時間を微調整しなければなりません

 

よく言われる目安として、捏ね上げ温度1℃の誤差で20分の調整が必要、というものがあります。

例えば捏ね上げ温度が26℃になった場合は一次発酵を20分延長したり、逆に28℃になった場合は20分短縮したり。

これはあくまで目安ですが、逆に言えば捏ね上げ温度がたった1℃違うだけでも20分の差が生まれる場合もあるということ。2℃3℃も違った暁には、かなりの差が出てしまいますね。

ここで調整をせずに一次発酵が不足したままどんどん進んでしまうとどうなるか。

途中の分割や成型でガスがある程度抜けるとはいえ全て抜けきるわけではないので、一次発酵で生地内にできた気泡はその後の生地体積にも影響を及ぼします。

また一次発酵は酵母菌の準備運動的な役割もあるため、ベンチタイム・二次発酵とも発酵力が劣ってしまいます。

当然、発酵力が劣った状態ではいくら時間通りに二次発酵させても同じレベルまで膨らみません。

結果、レシピ通りの二次発酵ではふっくら感が劣って焼き上がります。

生地を指定された捏ね上げ温度にバッチリ捏ね上げるには?

仕込み水温の調整と捏ねによる温度上昇の把握

仕込み水の温度をしっかり調整することで、捏ね上げ温度を自在に操ることが出来ます。

捏ね上げ温度を自在に操る方法はこちらの記事で解説しております。

paopao-bakefirst.com

 

家庭製パンで使える裏技「電子レンジで生地温度上昇」

電子レンジで不足した捏ね上げ温度を補うこともできる

これはお家での少ない生地量のパン作りでのみ出来る裏技です。

ごく弱めのワット数(150Wや200Wなど)で30秒ごとに加熱します。

なければ500Wで10秒ずつなど。

足りなければ再度少しずつ加熱して生地を温めます。

高いワット数で一気に何分も加熱すると、火が通ってしまいカチカチになりますのでご注意ください。

ただし、電子レンジでの加熱は底の部分が先に熱くなりますので、生地の量があまり多い場合このやり方はおすすめできません。生地温度が不均一になりすぎてしまいます。

粉の量が200g程度であれば問題なく作れたので安心してください。

途中でひっくり返したりするとなお良いでしょう

300g~は微妙ですね。どうしてもやりたければ生地をいくつかに分割して一つずつ加熱し、最後に一つにまとめるといいかもしれません。

お家でのパン作りは、キッチン室温を25℃前後に調整することが難しいお家もあるため、寒い部屋で冷たい手で生地を捏ねることもあるでしょう。

そんな時は仕込み水温をしっかり計算していても捏ね上げ温度が目標に届かないことがよくあります。

そんなときの解決策の一つとしてぜひご検討ください。

なぜ一次発酵が不足してるとその後の発酵も劣るのか?

酵母の活性化不足

一つ目の理由としては、一次発酵を十分に行うことで酵母菌を事前に活性化することが可能だからです。

ドライイーストを予備発酵させて使ったり、インスタントドライイーストでも予備発酵を行うことがありますよね?あれと全く同じです。

生地の軟化不足

二つ目の理由としては、発酵が進んだ生地は柔らかくなり、より膨らみやすくなるからです。

新品の硬い風船はそのままだと膨らませにくいけど、一度よく伸ばしほぐすと膨らませやすくなりますよね?

もちろん、分割丸めや成型の直後は生地のコシが復活しますが、発酵が進むほど酵母菌が生成した微量のエタノールは生地のグルテンを軟化します。

そのため、いくらコシが復活するとは言っても、捏ね上げ直後の生地と一次発酵を終えた後の生地ではその状態が根本的に異なります。

生地体積が不足

三つ目の理由としては、生地の体積にも影響があるからです。

グルテンの網目構造で出来た無数の小さな気泡の中で、酵母菌はガスを発生させて気泡をより大きくしています。

さらに生地を寝かせることで、ミキシングによって生地内に混入した酸素がグルテンと反応(グルテン酸化)し、より強いグルテンになります。

そうやって生地の気泡とグルテンが育てば、仮にパンチや分割丸めなどで生地のガスが抜けても、ガス保持力があるため完全に抜けきることはありません。

なので捏ね上げ直後の生地より一次発酵後にガス抜きをした生地の方が体積は大きいです。

ということは、最初からある程度ふっくらしている生地を成型した場合と、ふっくらしていない生地を成型した場合では、同じ大きさまで膨らませるなら後者のほうが時間がかかりますね。

 

 

作業中の室温

正確なパン作りには室温を調整する努力が必要

一次発酵もフィンガーチェックなどで十分にとれていることが確認できているのであれば、作業中の室温が適切かどうか疑ってください。

分割後に小さくなった生地は室温による影響をより大きく受けます。室温が低すぎると、分割前の生地とは比べ物にならないくらいすぐに生地温度は下がります。

お風呂のお湯は冷めにくいけど、マグカップのお湯はすぐに冷めますよね?それと同じです。

分割前であってもご家庭でのパン作りでの生地量であれば、お店で作る量に比べてはるかに少ないのでその分室温の影響を大きく受けます。

どんなに捏ね上げ温度を適正に仕上げても、室温で生地温度が下がってしまっては台無しです。

ちなみにパン屋さんの厨房室温は、25~27℃に調整することが多いです。

もし可能であれば冬場でも25℃前後まで室温を調整した方が良いです。

暖房だけでは部屋が暖まらないのであれば、鍋でお湯を沸かすことでも室温は上がります。湿度も上がって一石二鳥です。

 

ですが関東など防寒対策が施されていないお家だと、お部屋が全然暖まらないこともあるでしょう。

どうしても室温調整が難しいようなら、常に生地の温度を意識して、冷えてしまったらベンチタイムを発酵器の中で行ったり、発酵温度を少し高めにしてプラマイゼロにするイメージで取り組んでみたり工夫が必要です。

ベンチタイム 温度

一番良くないのは「ベンチタイム 室温で20分」と書いてあるからといって、寒~い室内で寝かせること。これでは十分に発酵しないだけでなく生地がキンキンに冷えてその後の二次発酵にも影響が出ます。

僕ならこんな時はレンジの発酵機能35℃でベンチタイムを取ります。どうせそこまで寒い部屋だと分割丸め作業の最中にもかなり生地温度が下がるはずです。下がってしまった分、通常より高めの温度で寝かせることで補うということです。

 

発酵環境の温度

お風呂で発酵は意外と温度が低い

捏ね上げ温度も作業室温も問題ないのであれば、二次発酵環境の温度を疑ってください。

家庭用オーブンレンジの発酵機能を使っている方は、設定温度と実際の温度が同じかどうか確認してみるといいでしょう。

また、扉の開け閉めで庫内の温度は変わってしまいます。お部屋が寒い時に二次発酵の途中で無駄に開けたりすると、それだけで庫内温度はかなり下がってしまい発酵速度に影響が出る恐れがあります。そういった点もイメージしましょう。

また、お風呂で発酵させたり、ビニールに入れてこたつで発酵させたりしている方は要注意です。多くのパンレシピは二次発酵は38℃を前提に作られていますが、お風呂やコタツがその温度になっているかはわかりません

温度が低ければ時間通りでも当然発酵不足になります。

そのため時間ではなく生地の発酵具合を見て延長の判断をする必要があります。

この場合、発酵見極めの基本スキルが必要となってきます。こちらの記事を読めばかなり見極める力はアップするはずです。

paopao-bakefirst.hateblo.jp

 二次発酵の見極めでは、生地を載せた天板を揺らしてみたときに、生地がプルンプルンと揺れるくらいに膨らんでいればOK、という見極め方もよく使われます。

上の記事に書いてあることと合わせて使うとよりわかりやすいでしょう。

 

生地の温度管理に便利な赤外線温度計

お家でのパン作りなら「電子レンジで生地を温める」という裏ワザが使えるわけですから、捏ね上げ温度を十分に管理出来ていなくてもなんとかなります。

その代わり、生地自体の温度は常に適温を保っておく必要があります。

そのためにも、こういったボタン一つで一瞬に生地温度がわかる"赤外線温度計"を一つ持っておくと非常に便利です。

あくまで表面温度を計るものではありますが、これが無ければ分割以降の小さい生地や成型後の生地温度は正確に計れません。僕にとってはもう手放せないアイテムです。

 

まとめ

パン作りで重要なのは、「今、目の前の生地が何℃くらいなのか」を常にイメージすることです。

「部屋が寒いから生地温度が下がっているだろうなぁ」

とイメージすることができれば、発酵時間を延長したり発酵室の温度をレシピより高めにしたり対処できるからです。

レシピ通りの時間や温度にこだわらず、その時の状況に合わせた最適な対処法をぜひマスターしてください!

 

2023/05/19

by BAKE FIRST(製パン科学研究家)