移転しました。
約3秒後に自動的にリダイレクトします。
こんにちは!製パン科学研究家の"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ
皆さんがご家庭でのパン作りによく使っているであろう「ドライイースト」、実は「本当のドライイースト」とは全くの別物ってご存じですか?
そして、状況によって正しい使い方とNGな使い方があります。
ここではご家庭でよく使われているドライイーストの正しい使い方や代用について解説します。
ドライイーストとインスタントドライイーストの違い
実はお家でパン作りをされている皆さんが普段使っているドライイーストと呼ばれるものは、正確にはドライイーストではなく「インスタントドライイースト」なのです。
ドライイーストとインスタントドライイーストの大きな違いは予備発酵の有無です。
ドライイーストは予備発酵が必要ですが、インスタントは予備発酵無しで粉に直接混ぜて使う事が可能です(レシピによっては例外の場合あり)。
そしてどちらも生イーストを乾燥させて製造されているのですが、ドライイーストは乾燥工程で死滅した酵母「死滅酵母」が多く含まれているため、その細胞から流出するグルタチオンなど様々な成分が生地伸びを良くし柔らかい生地になったり、旨味の濃いパンにもなります。
一方でインスタントドライイーストは乾燥工程による死滅酵母がほぼ含まれていないためそれらの効果は得られませんが、その分発酵力が強いのでドライイーストより少量の使用で済みます。
このように、本来はドライイーストとインスタントドライイーストは全くの別物のはずですが、多くのメーカーがインスタントタイプのモノを「ドライイースト」という商品名で販売してしまっているせいもあってか、日本の一般消費者の間ではドライイーストと言ったらインスタントタイプを指す場合がほとんどです。
なのでこの記事でも「ドライイースト」と表記して解説していきます。
ドライイーストの使い方
ドライイーストの小さじ1は何グラム?
一般的には小さじ1で3gと言われていますが、3g~3.5gの誤差はあると考えておいた方が良いです。
というのも、ドライイーストは顆粒状ですので小さじにどれだけ詰め込まれたかで量が変わってきます。顆粒の微妙な長さの違いもイーストの種類によって様々です。使う小さじの形状によっても誤差の出やすさは変わってきます。
計量のコツ
ご家庭で作るパン作りの場合、一度に作る生地の量が業務レベルに比べてかなり少ないです。
そのため、0.5gの誤差で20分以上発酵時間がズレることもあります。
発酵の見極めに自身が無い方は、レシピ通りに作業を進めても失敗なく作れるように0.1g単位で正確に計量することをオススメします。
「そうはいっても、本当にそんな発酵誤差あるの?」
気になりますよね?
ここで試しに粉量250gで作る場合を考えてみましょう。
レシピの指示ではイースト3gだとします。この場合は3.0gが正確な計量です。
これが3.5gで計量してしまうとどうなるか…
正確な計量なら一次発酵は27℃で60分が適正ですが、後者だと30~40分が適正となります。
(ベーカーズパーセントでいうとそれぞれ1.2%と1.4%だからです。)
逆にレシピでは3.5gなのに実際の計量で3.0gにしてしまうと、この場合はイースト不足なので発酵を延長しなければなりません。
その後のベンチタイムや最終発酵でも発酵速度は変わってきます。そうなると余計に発酵見極めが難しいですよね。
パン屋さんでは一度に作る量が大量だから1g単位で計量しても問題ないのですが、それでもイースト超微量のハード系レシピの場合は0.1gで正確に計量します。
もし今よりもっと安定して上手にパン作りがしたいという思いがあるなら、絶対に0.1g単位デジタルスケールを購入すべきです。
僕がパン作り上手になり始めて「パン作りってこんなに面白いのか!」と製パン業界に入る決意をしたキッカケも0.1g単位のデジタルスケールのおかげといっても過言ではありません。
もし0.1g単位デジタルスケールの購入を検討するなら、こちらの商品がオススメです。というかこれ以外はオススメできません!
他にも0.1g単位のモノはいくつもありますが、色々試した中で最も精度が安定しているのがこのスケールです。
パン屋の立ち上げに携わっていた際に「このスケールいいよね」とシェフと意気投合したくらい、精度の良さは折り紙付きです。
粉に混ぜるか、水に溶かすか
みなさんがご家庭で使っているインスタントタイプのドライイーストは、基本的には粉に直接混ぜて使うことが可能です。
ですが、レシピによっては事前に水に溶かさなければ失敗してしまう場合もあります。
どんな場合に溶かさなければならないのか、それについてはこちらの記事で解説していますのでぜひご覧ください。
ドライイーストの保存方法
インスタントドライイーストは開封前なら常温保存が可能、開封後は冷蔵保存を推奨されています。
しかしネット上には「絶対に冷凍保存」という声も多々見られます。
なので実際に検証してみました。
この検証結果を元に、ご自分の利用状況に合わせてやりやすい方を選択して下さい。
イースト入れすぎるとどうなる?
ご家庭でのパン作りだと粉量が250g以内であることも多いでしょう。
その場合、イースト量に0.5gの誤差があるだけで20分以上の発酵時間のズレが生じてしまいます。
入れすぎた状態でレシピ通りに進めていくと発酵オーバーとなりますし、発酵時間を短く調整しても生地時間(注1)が短くなることでパサつきやすく、イーストが多い分だけイースト臭も濃くなってしまいます。
(注1)生地時間…粉と水を混ぜ合わせてから焼成で「パン」になるまでの、生地としてこの世に存在している時間のこと。僕が考案した造語です。生地時間が長いほど生地の水和が進み老化の遅いパンになります。
少なすぎるとどうなる?
レシピ通りよりイーストが少ないと、その分だけ発酵速度が遅くなるので発酵時間を延長しなければなりません。
延長しないと発酵不足で膨らみや火通りの悪さなど様々な影響があります。
発酵時間をうまく延長して作っても、窯伸びはイーストが少ない分だけ少なくなってしまいます。
特に角食パンを作る際には、焼成前にどの程度の高さまで発酵させるべきか変わってきます。
イースト入れ忘れた場合の対処法
イーストだけ入れ忘れて生地を作ってしまった経験は、実は多くの人が経験する道です。
イーストを後から生地に混ぜて作っても大丈夫か?
出来る場合と出来ない場合があります。前者でも状況別に注意点があります。
詳しくはこちらの記事で解説しているのでぜひご覧ください。
ドライイーストとベーキングパウダーの違い
ドライイーストは酵母菌そのものです。
酵母菌が糖分を炭酸ガスとアルコール(又は水)に分解する「生命活動」を利用して生地を膨らませるもの。
一方でベーキングパウダーは炭酸水素ナトリウムと酸性剤が水や熱で化学反応を起こして炭酸ガスを発生します。
微生物の生命活動を利用した膨らみなのか、化学物質の反応を利用した膨らみなのかという違いがあります。
更に膨らみ方にも違いがあります。
ベーキングパウダーは水に反応してもごく少量の炭酸ガスが出ますが、膨らみに大きく貢献するのは加熱時の反応による炭酸ガスです。
高温の熱によって爆発的に炭酸ガスが発生することで、生地を作ってからスグに焼成(又は蒸し)をしても膨らみが得られるわけです。
一方でイーストは60℃以上の高温では死滅するため、ベーキングパウダーのように無発酵の生地をそのまま焼成しても爆発的な膨張は得られません。
そのため事前に発酵工程で生地内に炭酸ガスを充満させる必要があります。
この説明だけだとベーキングパウダーの方がよく膨らみそうに思えますが、そうではありません。
ベーキングパウダーのガス発生は一発限りで、永遠に膨らむことはありません。なので生地を作って長時間寝かせてふわっとさせることには向いていません。
ですがイーストは生き物なので有用な環境である限りは長期間ガスを出し続けることが可能です。(実際には生地内の糖分を食べつくしたらそこで止まってしまいますが、糖分さえ供給し続ければ自家製酵母同様に発酵し続けます)
なのでふわふわなパンを作るためには、事前に生地をエアリーにできるイーストでのパン作りの方が向いているというわけです。
逆にサクっと歯切れ良い焼き菓子を作る場合にはベーキングパウダーの方が向いています。
ベーキングパウダーで代用はできる?
上記で述べた通り、イーストとベーキングパウダーの膨らみ方には大きな違いがあります。
実際にパンのレシピでイーストから置き換えて作ると、全くの別物になってしまいます。
故に、イーストをベーキングパウダーで代用することは出来ないと言っていいでしょう。
なのでベーキングパウダーでパン作りをしたいのであれば、元々ベーキングパウダーで作ることが前提の「アイリッシュソーダブレッド」などにトライしてみてはいかがでしょうか?
アイルランド発祥の無発酵パンで、ふわふわパンではありませんがパンとスコーンの間のような印象でまた別の美味しさが味わえます♪
パン以外でのイースト活用法
イーストを焼き菓子で活用することで、発酵風味のある香ばしい焼き菓子を作ることが出来ます。
元々イーストで発酵させるレシピが多い「リエージュワッフル」(よく見るタイプのベルギーワッフル)がオススメです。
とっても手軽に作れるので、たまには趣向を変えてワッフルを焼いてみるのはいかがですか?
2023/04/29
by BAKE FIRST(製パン科学研究家)