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こんにちは、BAKE FIRSTです。
突然ですが質問です。
パン生地の発酵具合を左右する条件は何ですか?(糖分量など材料面を除く)
そう聞かれて真っ先に「温度」と答えたあなた、間違いではないけどもう一つ答えられますか?
実はこね方が違うだけで、例え温度条件が同じであっても発酵具合が大きく変わってきます。
ここではパンを作る上での正しい手ごね方法と、美味しく作れる理屈をわかりやすくお伝えしていきます。
パン作り初心者の方はこの記事を読むだけで中級者にランクアップします。
初心者でなくとも、あなたがパン作りにおいて窯伸びやふんわり感に納得がいっていないのであれば、必ずお役に立てる内容のはずです。
「パンの手ごねはバシバシ叩いてうるさいから、仕方なく妥協してます…」
そう思っているなら、ご安心ください。
集合住宅でも安心して出来て、かつ売ってるパンに限りなく近いパンが作れる手ごねのやり方をご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
ふんわり美味しいパンを作るために意識すべきたった一つのこと
これから作る生地が基本的な食パン生地なのか、柔らかい高級食パン系の生地なのか、そのタイプによっていくつかオススメ工程は微妙に変わってはくるのですが、全てにおいて共通するポイントがあります。
それは、生地に空気を入れ込むよう意識して捏ねることです。
生地に空気を入れ込むことでより多くの酸素を供給することができます。それによって良い生地を作る事ができるのですが、その理由は2つあります。
生地に酸素を入れたい理由その①「呼吸」
実は皆さんがよく「発酵」と一口に言い表すパン作りの工程の中には、厳密には「呼吸」と「発酵」という酵母菌による異なる働きが含まれています。
呼吸とは…
酸素がある環境下で酵母菌が生命活動に必要なエネルギーを得るために行うもの。
糖分+酸素→二酸化炭素+水
酸素と合わせて糖分を二酸化炭素と水に分解します。
発酵とは…
酸素がない環境下で酵母菌が生命活動に必要なエネルギーを得るために行うもの。
糖分→二酸化炭素+エタノール
糖分を二酸化炭素とエタノール(アルコール)に分解します。
どちらも糖分を分解して二酸化炭素を生産する点は同じですが、呼吸の方がその生産量が圧倒的に多いのです。
つまり、同じ糖分量を使っててもより大きく膨らむということです。
そのため、食パンや菓子パンのように風味は副材料で作り出し、とにかくふんわり感を作り出したいパンにおいては、一次発酵・ベンチタイム・最終発酵に至るまでなるべく「呼吸」率の高い生地作りが大事となります。
呼吸メインで作らないパンとは?
最近ではパンのジャンルに拘らず「こねないパン」なるレシピが多く紹介されていますが、一昔前はこねない系のレシピはハード系がメインで広まってた印象があります。
先ほどは「とにかくふんわり感を出したいパンにおいては」呼吸が大事、と書きました。
逆に言うと、ふんわり感よりも発酵風味を重視するパンの場合は「呼吸」の割合を少なめに考えて作る方が望ましいと言えます。
特にバゲットなど砂糖が入らないパンの場合、粉の旨味や甘味を熟成で引き出すだけでなく、「発酵」によるエタノールの風味などいわゆる発酵風味で美味しさを引き出すことが重要です。
逆にたくさん捏ねて酸素を必要以上に供給してしまうと、早いうちから酵母菌が増えてしまって、生地が熟成されて甘味が生まれるスピードを追い越して糖分を食われてしまうかもしれません。断面の美しさだけでなく味にも影響しそうですね。
そういうパンは、あまり酸素を入れないよう捏ねを最低限にして、長時間かけて「発酵」をさせることが美味しさへの道となります。
※たくさん捏ねて短時間発酵で焼き上げるパンと90分以上の一次発酵を行い焼き上げるパンの風味を比べてみると、前者はほとんど素材の香りで後者はほんのり香ばしいアルコール様の香りがして、呼吸と発酵の割合の違いを体感できると思います。
生地に酸素を入れたい理由その②「酸化」
生地に入った酸素の使い道は酵母菌による呼吸だけではありません。
生地の骨格であるタンパク質「グルテン」と反応することで、グルテン同士の繋がりが強固なものとなります。
すると、生地のガス保持力が向上し、より大きく膨らむことが可能となります。
よりふんわり大きく焼き上げたいからといって最終発酵をレシピより長くとろうとする人、結構いると思います。
ですが、最終発酵を延長するほど生地のコシは弱くなって、焼成中のボリューム増加が減ります。最悪グルテンがガスを保持出来なくなり、余計と窯伸びが悪くなることも。
その生地が最終的にどれだけ膨らむ事が出来るのか、それは材料選定に加え生地の捏ね具合でほとんど決まってしまいます。
食パンをレシピの写真通りに作りたいのに、全然窯伸びしない…もっとふわふわにしたい…
そんな時は、発酵もそうですがこね方も見直す必要があるかもしれません。
せっかくグルテンの多い強い粉を使っても、こねが不十分だと焼いて膨らむ上限は下がってしまいます。
子どものうちに親から十分な愛情をもらえなかった子が大人になって生きづらさを覚える、そんな状況と似ている気がします。(もちろん、よく膨らませることだけが全てではないですが)
ふんわり美味しいパンを作る手ごねのやり方
ここまでふんわりよく膨らむ良い生地を作るには空気を入れ込むことが重要だとお伝えしました。
ここからは、空気を入れ込むのに最適で、かつどんなお家でやっても近所迷惑にならない手ごねのやり方をご紹介します。
最強の手ごね「ズリっと捏ね」
生地をズリっと引き伸ばす様子、そして昔のテレビ番組でパン職人の廣瀬満雄さんがパン屋修行に来たお悩みホスト省吾さん?に放った名言「ズリっとやれや!」から引用して…
「ズリっと捏ね」と命名しました。
ぜひ冒頭に貼った動画も合わせてご覧下さい。
ここではやり方の詳細をお伝えします。
手のひらの付け根の部分を生地に押し当て、こね台に擦り付けるようにズリズリッと押し伸ばします。
そのまま生地を引き戻して折りたたむ。
この時、生地はブチブチと千切れますが大丈夫です。むしろ、そうなるくらいしっかりズリっとやってください。
引き伸ばされて粗く破れた生地の表面は、表面積が一気に広がります。その分だけ空気がたくさん生地に入り込むことができます。
また、この動作を何回も繰り返すことで、グルテンの酸化も進み生地がだんだんなめらかになってきます。生地内部の網目構造はより細かくなり、表面がだんだん滑らかになってきて、伸びの良さがでてきて簡単には千切れなくなります。
ベーグルのような硬すぎる生地を除いて、ほとんどのパン生地はこの捏ね方一本でも十分いい生地を作ることが出来ます。
その上、騒音も発生しないため集合住宅でも安心してできます。
※動画では見やすさを重視して常に右手でズリっとやっていますが、体の重心が偏った姿勢のため両手を使うことをオススメします。もちろん、やってみてやりやすい方で構いません。
ふわふわのパンが焼ける生地を作るために必要なたった一つの道具
この最強の手ごね法を行うにあたって、一つだけ必要なものがあります。
それはこね台です!
良い感じのキッチンで平らで丈夫な作業スペースがあるお家なら、わざわざこね台を買わずともそこで直に生地を捏ねれば良いと思います。
↑こういうキッチンとかね。
でも、僕の家のキッチンはこんな恵まれていないので、代わりに丈夫なこね台を用意する必要がありました。
今までたくさん試してきた中で、手放しでオススメできるものを紹介します。
こちらまーぶるめん台というこね台です。
大理石素材で非常に丈夫で、裏側の四隅に小さな滑り止めパッドが付いています。
こんな小さくて大丈夫かと最初は不安に思いましたが、めん台の重量がしっかりあって安定感バツグンでした。
シリコンマットは生地がくっついてズレて話にならないわ、木製のペストリーボードはだんだん傷がついて生地もべた付いて衛生的に心配になってくるわで消耗品扱いでしたが、これなら半永久的に使えそうです。
「重くて洗うのが大変」という苦言レビューが少量見られますが、パンのこね台って洗う必要ないんですよね…
霧吹きで水を吹きかけてカードで表面を綺麗にこそげおとして、最後にふきんで綺麗に拭き上げればいいんです。最後にアルコールスプレーでも軽くかけておけば十分。
逆に、毎回洗剤で洗ってたらせっかくこね台に住み着くはずだった善玉な酵母菌まで殺してしまいます。
特に雑菌にデリケートな自家製酵母パンとか作る時、この善玉な酵母菌のバリアーが役に立ちますから、なんでもかんでも殺さないであげてください。
サイズは最低でもレギュラーサイズ以上であった方が使い勝手は良いです。たまに洗ったり置き場所変えたりする人はラージサイズだと今度は重くて扱いにくいでしょうから、やっぱりレギュラーサイズが丁度いいです。
叩き捏ねの正しいやり方と間違ったやり方
極主夫道のドラマを見ていて、旦那さんがお料理教室でパンを作るシーンがありましたが、あれを見て「こんな叩き方じゃ生地できないよ~」と思ってしまいました。
でも恐らく、そういう演出が生まれるということは、生地を叩いて作ることに対する誤解が世の中にはあるということなんだろうなと思ったのであえて取り扱うことにしました。
ズリっと捏ねだけでもいい生地は十分作れますが、体力的な面を考えると遠心力を利用する叩きごねを併用した方がラクっちゃラクです。
なので騒音問題が気にならない方は是非叩き捏ねもやってみてください。
動画でも紹介している通り、叩き捏ねも正しいやり方でやらないといい生地は出来ません。
生地は手で持ったまま、スナップをきかせて台に叩きつけます。
このとき遠心力が働くことで、生地が引き伸ばされて、かつ生地が打ち付けられて圧力がかかります。
生地が引き伸ばされることで畳めるようになるので、畳んだら生地の向きを変えて再度叩きつける。これを繰り返すのです。
畳むのが重要です。畳まなかったら生地はただびよ~んと伸びていくだけで、生地のグルテン骨格はいつまでたっても鍛えられません。
生地を手から離してしまい、台に投げつけるようにしてしまうと、圧力は逃げてしまいますし生地を引き伸ばすこともできないため、あまり意味がありません。
ちなみに叩き捏ねはこね作業の後半、つまりある程度生地ができてきた段階から始めます。それまでは先程紹介したズリっと捏ねや押し捏ねでまず生地をしっかり作ることが必要です。