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こんにちは!製パン科学研究家のBAKE FIRSTです(・ω・)ノシ
「しっかり捏ねてるつもりなんだけど、生地のグルテンチェックで薄い膜が出来ない…」
そんなお悩みありませんか?
こちらは僕が手ごねで作った生地のグルテンチェックの様子です。
パン屋レベルのふわふわパンを作るには、このように指紋が透けて見える薄い膜が出来る生地を作る必要があります。
ここでは生地の薄い膜が出来ないお悩みを解消する〇つのポイントを解説します。
パン作りは「科学原理」を理解しているか否かでコツをつかめるかどうかが大きく変わってきます。
初心者向きの短絡的な解説に比べるとちょっと文章多めのハウトゥーになりますが、しっかり理解すれば必ず写真のような生地が作れるようになるので、ぜひマスターしてください!
なぜ薄い膜が出来ない?
グルテンチェックで生地を薄く伸ばそうとしても、薄い膜ができず千切れてしまう…
そうなってしまう原因は大きく分けて
- こね不足
- 生地の状態が悪い
- 伸ばし方が雑
この3つになります。
ただし、一言で「こね不足」と言っても
「じゃあもっと長時間捏ねれば良いのか!」
と短絡的に判断してしまうと問題が全く解決されないことも多いです。
生地の状態も様々な要因があります。
ここからは、薄い膜が出来ない3つの原因について、一つずつ詳しく掘り下げていきます。
「こね不足=捏ね時間不足」だけじゃない
「薄い膜が出来ないから40分以上捏ねてます」
そんな声をよく耳にしますが、そんな長時間捏ねているのに薄い膜が出来ないのは、捏ね方そのものが間違っている可能性が高いです。
粉量500gといった大容量で手ごねをしているなら長時間かかるでしょうけど、250g以内であれば20分以内の捏ね時間で生地は完成するはずです。長くても30分。
ちなみにこの記事の冒頭でお見せした生地は、実質の捏ね時間は10分にも満たないです。混ぜ合わせ段階等を含めたミキシング全体で見ても15分程度です。
こね作業で大事なのは、より短時間で効率的に生地を発達させること。
それを達成するには、グルテンが発達する仕組みを理解する必要があります。
この動画でもお伝えしている通り、グルテンを発達させるためには「酸素」が欠かせません。
生地に酸素を効率よく混入できる捏ね方
ポイントは、思いっきり「ズリっと」生地を伸ばすこと。
生地が破れるくらい思い切りやるのが重要です。
破れてブチブチになった生地表面は、表面積が何十倍にもなり、そこに空気が入り込んでグルテン酸化が促されます。
このコツを意識できているか否かでこんなにパンは変わります。
逆に、間違った捏ね方のまま捏ね時間を増やしても生地は決して良くなりませんし、かえって悪くなる場合もあります。
もし酸素が無い部屋でパン作りをすると?
日清製粉(株)の研究によると、酸素のない”窒素のみの部屋”で小麦粉生地をミキシングした際には、酸素のある部屋に比べてグルテンの発達が著しく弱いことがわかります。
もちろん、現実のパン作りでは酸素のある部屋で行うため全くグルテンが発達しないことはありませんが、それでも生地中にいかに酸素を取り込むことが大事かというのはおわかりいただけるはずです。
興味があったら↑の2ページ目をぜひご覧ください。
本来お家でのパン作りは良い生地ができやすい
皆さんはお家でパン作りをする際、イーストは何を使っていますか?
恐らく、スーパーでもよく見かける「インスタントドライイースト」をお使いかと思います。
(仮に商品名が「ドライイースト」であっても、顆粒状で原材料に「乳化剤・ビタミンC」が含まれ、予備発酵不要と書かれていればそれはインスタントタイプです)
実はインスタントドライイーストに添加されているビタミンC、製パン業界では酸化剤として使用されています。
酸化剤は空気中から生地中へ酸素を引き込む性質があるため、グルテンの酸化が促され丈夫で弾力のある強い生地が出来やすいのです。
工場でのパン製造では、ビタミンCが含まれていない生イーストを使用しているため、わざわざ酸化剤を別途添加するほどです。(パン屋さんでは無添加のお店も多いですが)
状態が悪い生地とは?
パン生地の薄い膜が出来ないのは、こね不足だけが原因ではありません。
むしろ、生地の状態が悪いといくら捏ねてもそれ以上グルテンは発達できない、なんて場合もあります。
生地の状態に影響を及ぼす要因は
- 生地のpH
- 仕込み水分が製パン向きではない
- グルテン目線で邪魔者となる材料の使用
- 水の硬度
- 水分量が不適切
などが主に挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
生地のpHは意外なコトで変わる
パン作りでは生地のpHが弱酸性であることが最も製パン性に適しています。
これは酵母菌が弱酸性で最も活発になることだけでなく、グルテンが程よい締まりを得て丈夫な生地になることも理由です。
pHが低すぎて酸性になるとグルテンは締まりすぎて柔軟性が無くなり、薄く伸びなくなりますし、高すぎてアルカリ性になると締まりが弱くなりすぎて丈夫さに欠けます。
日本の水道事情は良好なので、普通のレシピを普通に作っていればpHが問題になることはまずありません。
しかし、アレンジで強い酸性の材料を加えた結果としてpHが悪くなるケースもよくあります。
- レモン水
- ヨーグルト
- 酢
- ハイビスカスパウダー
上記三つのように食べて酸っぱいことが明確にわかる食材は、使用量を注意すべきです。
また、ハイビスカスパウダーのようによくわからない素材を使ってみたら、実はpHが酸性だった、そんな経験もあります。
あまり製パンに使われていないような材料を使う場合は、pHが変わる可能性を覚悟した方が良いでしょう。
仕込み水分が製パン向きでないものとは?
意外と皆さん知らないことですが、水や牛乳の代わりに豆乳やココナッツミルクを使うと生地の柔軟性が損なわれ、ふわふわ感に欠けるパンになります。
牛乳仕込みと豆乳などの植物性ミルクで作る比較動画があるので、どんな違いが出るのか見てみたい方は下記リンクをご覧ください。
【驚愕の結果】牛乳の代わりに使えない植物性ミルクはどれ!?比較検証してみた - YouTube
pHを計ってみても特に問題は無く、恐らく牛乳とは違う豆乳独自の固形成分がグルテンの邪魔者になっているのだと思います。
とはいえ、牛乳もデメリットが全くないわけではなく生地の硬化作用がありますから、その視点で見たら単に硬化作用がより強いというだけのことかもしれません。
(明確な科学的根拠はまだ見つけられていません)
グルテン目線で邪魔者となる材料とは?
ココアパウダーや抹茶パウダーなどの小麦粉ではない粉類や、ナッツ類やドライフルーツなどの大物具材がこれに当たります。
後者の大物具材はプレーン生地が完成した後に混ぜ込むレシピが多いですが、前者のパウダー類は最初から粉に混ぜて仕込むレシピが多い印象です。
しかし、どちらも異物であることに変わりないので、パウダー類もプレーン生地完成後に練り込むのがオススメです。
その際はパウダーに適量の水をなじませてペースト状にしてから生地に練り込むと馴染みやすいです。
水の硬度が高すぎるとNG
パン作りに使う水は硬度も適切な値があります。
日本の水道事情であれば、ソフト系のパンを作るのに適しており、ハード系は最適とは言えなくとも問題なく作れる範囲です。
硬度が高い水を使うことでグルテンに程よい締まりが得られます。そのためあまり捏ねずに作りたいハード系のパンにおいて、「捏ねずにそこそこ丈夫な生地が得られる」として重宝されます。
エビアンのように硬度300程度がハード系に最適な硬度とされていますが、コントレックスのように硬度1000以上ある水だけで作ると締まり過剰で柔軟性に欠けてしまいます。
水の量が不適切
初心者の方にありがちなケースとして、
- 吸水量を減らしすぎ
- 粉を追加しすぎ
この2パターンによって生地内水分量が不足している場合があります。
捏ね始め生地がベタベタしているからといって、粉を追加していませんか?
ベタベタ生地を触りたくないから最初から水を減らしすぎていませんか?
パサつかないふわふわパンを作るためには、最初のベタつきは避けては通れません。当然、水分不足の生地は硬すぎて薄い膜はできないです。
「ベタベタだと捏ねられない!」
よほど計量やレシピが間違っている場合を除いて、それは捏ね方が正しくないことが原因です。
まずは今やっている捏ね方を見直してみましょう。
「自分の捏ね方は問題なさそう…」
であれば、「生地が完成したらベタつきは全く無くなる」という考え方自体を無くす必要があるかもしれません。
人それぞれ異なるちょっとした思い込みが上達を妨げていることはよくあります。
地道に一つずつ見直してみてください。
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2023/03/31
by BAKE FIRST(製パン科学研究家)