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パン作りに使う強力粉をスーパーで買う時、同じ「強力粉」という名目でも値段が違う粉が並んでいますよね。
外国産と国産、という違いなら値段が違うのも納得だけど…
同じ外国産でも値段が違うと、
「この値段の違い、実際パンは美味しくなるの?」
って気になりますよね?
今回は、似たような外国産の強力粉で値段の違う2つの粉でパン作りをして、何が違うのか解説します。
それぞれの粉の特徴から、オススメの使い方までご提案します。
- 値段は違うけどタンパク量は同じ強力粉
- 生地感の微妙すぎる違い
- 風味の微妙な違い
- 値段の差は粉の等級違い!?良し悪しの基準は?
- 等級が違えば香りも違う
- 等級違いで生地の熟成も変わる!?
- 生地の扱いやすさが違うのはなぜ?
- たんぱく量はアテにならない!?
- 使い分ける必要はあるのか?
値段は違うけどタンパク量は同じ強力粉
今回比較に使うのは同じ北米産小麦であり、かつタンパク量も同じという、同系統の2種類の強力粉です。
一つは西友で一番安い強力粉。
もう一つはよくあるカメリヤ。
同じようなスペックなのに、この2種類には結構な値段の差があります。
オリジナルブランドだからこんなに安いのか?いやいや、それだけの理由じゃこんなに値段の差はつかないはず。
一体この値段の差にはどんな違いがあるのでしょうか?作って確かめるしかありません。
生地感の微妙すぎる違い
「カメリヤの方が生地が扱いやすいんじゃない?」
と考えた方もいるでしょう。
まぁ概ね正解です。
ほんのすこーしだけ、カメリヤの方は水を加えてもいいかな?って思えました。
逆に言えば、同じ水分量ならカメリヤの方がベタつきが少なくて扱いやすいということ。
でも、これほんの微々たる差でしかありません。ぶっちゃけどっちも同じように使っても差し支えなさそうです。
風味の微妙な違い
実際に焼き上がったパンの香りを比較してみると…
たしかに、微妙に違います。
カメリヤの方が上品な香ばしさとすると、安い方はもう少しワイルドな?野生味あふれる香り?そんな印象でした。
でも、これもかなり微々たる差です。
何も言われずにパンだけ食わされて「このパンはカメリヤ?それとも皆様のお墨付き?」と出題されても、答えられる自信はありません。
そのくらい微妙な差です。ぶっちゃけどちらも普通に美味しいです。
値段の差は粉の等級違い!?良し悪しの基準は?
どちらもパンを作る上では差し支えない粉です。それなのに、なぜ大きな値段の差があるのでしょうか?
一つはもちろん、オリジナルブランドだとか仕入れの関係によるものであることは確かです。
ですがそれ以上に、粉の等級違いである可能性が大いにあります。
小麦粉は小麦粒の中でも中心部分と表皮に違い部分とで性質が微妙に異なります。
そのため、より中心に近い部分のみを使った粉を特等粉とし、そこから順に一等粉、二等粉、三等粉、末粉と分類されます。(皮も胚芽も全て含むモノは全粒粉)
主にパン用小麦粉として出回っているのは一等粉、二等粉あたりが一般的。等級が高いほど値段も高い。
同じ成分会社から産地が同じで粉としての性質も似ているけど、上位互換として値段が異なる粉が販売されていることもあります。この場合は等級違いである場合が多いです。
そして今回の検証で使った粉も、等級の違いによる値段差があることは容易に予想できます。
それは、焼き上がりの香りや生地感の微妙な差からもわかります。
等級が違えば香りも違う
等級が低い粉は皮に近い部分をより多く含む事になりますので、より穀物らしいワイルドな香りとなります。
全粒粉により近いということです。
一方で等級が高いほど小麦粒の中心部分しか入らないので、淡白で上品な香りのパンになります。
等級違いで生地の熟成も変わる!?
等級が低い粉ほど生地の熟成も早いです。
その理由は二つ。一つは酵素がより多く含まれるから。もう一つは灰分(ミネラル)がより多く含まれるから。
ミネラルは補酵素としての働きをします。つまり、酵素の働きをバックアップするということ。すると熟成がスムーズになります。
「灰分がより多い=皮に近い部分がより多い=等級も低い」という感じで考えることもできます。
ただし、スーパーに売っている強力粉には灰分値が記載されていません。なので今回使った粉が正確にどれくらい違うのかはわかりませんが、確かに安い粉の方がくすんだグレーがかった色に見えました。灰分が多い粉ほどグレーがかって、少ない粉ほど白さが際立ちます。
生地の扱いやすさが違うのはなぜ?
熟成が進みやすいということは、生地のでんぷんやたんぱく質の分解が早いということです。
でんぷんが分解されれば麦芽糖になるため、実質糖分量が増えるということですから生地のベタつきは理論上増します。
また、たんぱく質が分解されるということは、グルテンも多少ながら分解されていくので生地のコシがユルくなります。
とはいえこの理論はあくまで「酵素活性が十分残っている粉」における話。
カメリヤと西友の安い粉の間に灰分の差があっても、酵素活性はどちらも大差ないはずです。(一般的なパン用強力粉は製パン安定性を求めるため、製粉ローラーの熱であえて酵素を失活させるのが望ましいからです)
じゃあ、なぜ同じたんぱく量なのに生地が少し違うのか?
それは「たんぱく量≠グルテン量」だからです。
たんぱく量はアテにならない!?
小麦粉のたんぱく質の約85%がグルテンの元となるグルテニンとグリアジンで構成されています。
逆に言えば、残りの15%はグルテンと無関係なたんぱく質が含まれているという事です。
そして、グルテニンとグリアジンが占める割合が粉によって違う。これこそが、同じたんぱく量でも生地感が違ってしまう理由です。
特に、等級が低い粉ほどグルテンと無関係なたんぱく質が多く含まれる傾向にあります。
その観点で見れば、西友の安い粉はカメリヤよりも少しグレーがかった色で等級が低そうだから、同じたんぱく量でも生地感が違ったのも納得です。
なので、たんぱく量がほんの少し低い値でも扱いやすい生地が出来たりもするし、逆に高くても期待するほど変わらないってこともあります。
使い分ける必要はあるのか?
正直、日本のスーパーに売っている強力粉は最低価格でもそれなりのクオリティが担保されていると言えます。
なので、普通に作って楽しむ分にはそこまで大差ないと言っていいかもしれません。
あえて使い分けるとするならば…
淡白で上品な香りがする高い粉は、乳製品など副材料の風味を存分に活かしたい場合にチョイス。
ワイルドな香りの安い粉は、小麦としての香りを少しでも強調したい場合にチョイス。
といった感じでしょうか。
といっても、これを逆にしたからといってパンが美味しくなくなるわけでもないし、ホントに微々たる違いです。
しいて言うなら残留農薬問題について気になる人はなるべく等級高いものを使った方が安心かもしれません。皮に近い部分ほど農薬が浸透している可能性があると言われていますからね。
でも、それもパン用小麦として日本で売られている輸入粉なら高いモノも安いモノもそんなに大差ないような気がしています。海外だともっと等級の低そうな粉まで売られているようですが。そもそも気になるなら国産小麦や無農薬を使おうって話になってきますし。
あくまで参考程度に、ご自分の納得できる考え方で粉を選択しましょう