【リスドォルを強力粉+薄力粉で代用】何が違うの?注意する点も解説

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こんにちは!"BAKE FIRST"です(・ω・)ノシ

リスドォル 代用

バゲットなどハード系のフランスパンや、パン・オ・レなどフランスのパンなどを作るレシピで必ずと言っていいほど指定されている「リスドォル」。

このリスドォルを「強力粉+薄力粉」のブレンドで代用することが出来る、と解説する人もいますが、まったく同じモノが作れるわけではありません

レシピによってはうまくいかない場合も…

今回はリスドォルを強力粉と薄力粉のブレンドで代用すると何が違うのか、そして代用で注意すべき点について解説します。

リスドォルを強力粉+薄力粉のブレンドで代用した際の違い

リスドォル 代用

「強力粉と薄力粉を8:2の割合でブレンドすればリスドォルの代用ができる」

とよく言われていますが、決して全く同じモノにはなりません。

(もし同じだったら準強力粉の存在意義がありませんよね)

 

では、一体何が違うのか?

粉自体の特徴として大きく異なる点は

  • 粉末麦芽の有無
  • 製粉方法の違い

この2点です。

主にこれらが影響して、出来上がるパンに様々な違いを生んでしまいます。

 

熟成具合が変わる

リスドォルと強力粉+薄力粉ブレンドでの代用の一番異なる点が熟成具合です。

熟成とは何か?簡単に言うと、生地の中ででんぷん分解酵素が粉のでんぷんを分解して麦芽糖を作ったり、たんぱく質分解酵素がたんぱく質をアミノ酸に分解したりといった、酵素による分解作用を指します。

特にハード系のパン作りでは前者のでんぷん分解酵素による働きが重要であり、作用の割合も大きいです。

リスドォルには粉末麦芽が元々添加されています。

粉末麦芽には酵素が豊富に含まれているため、リスドォルで作ったパンは強力粉+薄力粉で作るパンよりも熟成の進み具合が早いのです。

 

また、本来小麦粉には粉末麦芽を添加しなくても酵素がいくらか残存しているのですが、製粉方法によってはその酵素は壊れてしまい、生地にしても熟成が進みにくいモノとなっています。

というか、そういう粉の方が多いです。

一般的な強力粉と薄力粉は機械で製粉されます。常に回転し続けるアツアツの金属ローラーで粉砕されるため、粉の酵素は熱で壊れてしまうのです。加えて薄力粉は原料となる小麦が柔らかいため、かなり細かく粉砕されてしまい物理的にもダメージが加わります。

小麦粉 製粉

一般的な製粉は機械で行われる。この中にローラーが…

リスドォルをはじめとした準強力粉(フランスパン専用粉)は、こうしたローラーによる酵素の失活を考慮して、大小様々な粉粒子が混在するように配合されています。大きな粉粒子はそれだけローラーによるダメージを受けていないため、酵素活性もある程度残っているということです。

 

こうした様々な理由から、リスドォルとその代用ブレンドでは熟成具合が変わってしまうわけです。

では、熟成具合が変わると具体的にパンはどうなってしまうのでしょうか?

焼き色が薄くなる

パン作りにおける熟成の多くは「でんぷん分解酵素による、でんぷんから麦芽糖への分解」です。

ミキシング中・発酵中・成型中・あらゆる工程の最中にも熟成は進んでいきます。

強力粉+薄力粉で代用するとこの熟成が遅くなるのですから、リスドォルで作るパンに比べて焼成前の時点での残存糖分が少なくなります。

その結果、焼き色が薄くなってしまいます。

香りが薄くなる

残存糖分が少なくなることの影響は焼き色だけではありません。

そもそも糖分が少なくなることで焼き色が薄くなるというのは「メイラード反応」と「カラメル化」という化学反応が少なくなることが原因です。

どちらもパンの焼き色を担う反応ですが、特にメイラード反応はパンの焼き色に加えてパンらしい香ばしい香り成分を生み出します

残存糖分が少なくなることでメイラード反応が浅くなる。それによって焼き色と香りが同時に薄まります。

 

加えて、リスドォルはフランスパン専用粉として作られていますから、当然フランスパンを作るための最低限のポテンシャルを有するように作られています。

小麦の産地自体は主にカナダやアメリカですが、灰分が高めになるようにしたりと穀物らしい香りがある程度残るように工夫されているわけです。

一般的な強力粉や薄力粉はそもそも使途が異なるため、そういった工夫はそこまでありません。

甘味も減る

熟成による糖分生成があまり期待できない強力粉+薄力粉ブレンドでの代用だと、当然焼きあがったパンの甘味もリスドォルより劣ってしまいます。

特に砂糖を使わないバゲットなどのフランスパン生地ではその微妙な違いが意外と目立ちます。

(一方で、砂糖を入れて作るパンの場合はそこまで目立つ甘味の差はありません。)

 

リスドォルを強力粉+薄力粉で代用する際に注意すること

先述のように、リスドォルと強力粉+薄力粉ブレンドでは根本的な違いがあるために、全く同じものだと思って作ると様々な壁にぶつかります。

ですが、工夫をすることでそれらの違いの差を縮めることもできます。

ここからはリスドォルをブレンド代用する場合に注意する点と対策について解説します。

発酵が遅くなるかも…

リスドォル 代用砂糖を使うレシピであれば問題ありませんが、無糖のフランスパン生地などの場合は発酵に使う糖分は熟成で生成される麦芽糖に頼るしかありません。

何の工夫もせずただ代用するだけでは、発酵が遅くなる場合があります。

パン作りに限らず、特に自家製酵母作りで粉を使う場合においても同じことが言えます。

この問題を解決する方法としては、

  • モルトを追加する
  • イーストを減らして糖分消費速度を遅くする
  • 酵素活性の強い強力粉を使う

主にこの2点になります。

モルトを追加

リスドォルに添加されている粉末麦芽はいわゆるモルトパウダーですので、元のレシピよりモルトパウダー(又はモルトシロップ)を追加すれば熟成速度は補えます。

リスドォル自体は準強力粉の中ではわりと個性控えめな方なので、これだけでもかなりデメリットは解決できます。

熟成速度を補えば、結果的に発酵だけでなく焼き色や香りの問題にも着手できるので、一石二鳥です。

イーストを減らす

あるいは、熟成による糖分生成速度がリスドォルに比べて遅いことに寄り添って、イーストを減らして発酵による糖分消費速度も遅くしてあげる方法もあります。

もちろん、この場合は発酵時間など長くなりますので、個人的にはモルト追加の方が手っ取り早くてオススメです。

それに、その辺に売ってる強力粉+薄力粉が果たしてどれだけの熟成能力があるのか定かではないので…僕はあまり期待していません。

酵素活性の強い強力粉

元から酵素活性の強い強力粉を使うことで、熟成速度が遅くならないようにする方法もあります。

スーパーでも手に入るようなごく一般的な強力粉の多くは酵素活性が低いですが、灰分値が高めの粉や石臼挽きの粉は酵素活性が高い傾向にあります。

特に後者はかなり活性が高いので、リスドォル単体で作るよりも熟成が早い可能性も…!?

風味も穀物らしいワイルドな香りがあるので、一石二鳥ですね。

 

香りを補うには?

ブレンド代用による弊害は熟成速度だけでなく、香りの差も重要ですね。

香ばしさも代用で再現したいのであれば、

  • 全粒粉やライ麦を少量配合する
  • 灰分値高めの粉や石臼挽きを使う

こういった工夫が考えられます。

リスドォル 代用

全粒粉をブレンドすれば、香ばしさUP!

ブレンド割合は必ずしも8:2ではない!

強力粉も薄力粉も、その銘柄によって様々なたんぱく量の商品があります。

使う粉が違えば、同じ8:2ブレンドでもたんぱく量が違ってきます。

リスドォルと本当に近い生地感と吸水能力を得るためには、ブレンド割合を計算し直す必要があります。

代用の際の計算方法についてはコチラの記事で解説していますので、是非ご覧ください。

paopao-bakefirst.com

 

 

特に何も調整せず代用できるパターンもある

リスドォル 代用

副材料が主役のパン、リスドォルの個性は埋もれる…?

 

パン・ヴィエノワやパン・オ・レ、ブリオッシュなど、配合はリッチなのにフランスで作られるパンだからという理由でリスドォルが指定されているレシピも多いです。

これは賛否両論分かれそうですが、僕はこういったリッチなパンに関しては副材料で風味を演出するものなので、わざわざリスドォルを使う必要はないと考えています。

バゲットなど無糖生地のパンに比べて、フランスパン専用粉を使うことによる恩恵をそこまで感じられないのです。

粉には食感の演出だけ求めればいいので、強力粉と薄力粉のブレンドで十分です。

パン・ヴィエノワならギリギリ粉の風味による違いは出るかもしれないけど、ブリオッシュにもなると完全にバター勝負ですし、ヴィエノワでも調理パンにするとなると主役は具材ですから、たかだかリスドォル程度の香りではブレンド代用と大差ないでしょう。

もちろん、ものすごく吟味すれば違いがわかるという方もいるでしょうから、完全に否定することは出来ません。

あくまで費用対効果の観点から見て、こういったパンなら普通の強力粉と薄力粉を使って安く作っても問題なさそう、という目的です。

 

 

世界のパン文化が多様化した理由までわかる、小麦粉と熟成に関する深い話はコチラ。

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