丸め作業でとじ目をしっかり閉じる?キレイに丸くする?それ逆にダメ!…な場合もあるって話

こんにちは!BAKE FIRSTです
今回の授業は「丸めの時、閉じ目ってどうするの?」について。

 

パン作りの丸め作業について、
「しっかり中心一点でキレイに閉じないといけない」
と思ってる方も多いはず。
実際に僕のYouTubeチャンネルの視聴者さんから、パン教室で「ガスが逃げるから」という理由でそのように教わったという体験談も頂いています。

 

でも、実際には丸め作業での閉じ目ってそんなにキレイに閉じる必要も無いんですよね。

ガスが逃げるか問題について、「じゃあ全く丸めなかったらめっちゃガス逃げるってこと??」っていう理論になると思います。
でも丸めをせず切りっぱなしで焼成するパンが世の中にはいくつかありますよね。
例えばリュスティックやパヴェなど…
あれらがガス逃げて膨らまないかというと、そんなことありませんよね。

 

ガスが生地から逃げてしまうのは、生地のグルテン骨格の強弱、つまりガス保持力の問題です。
閉じ目をしっかりキレイに閉じるのとはあまり関係がありません

 

丸め作業で本当に大事なのは、いま目の前にある生地のコンディションに応じて適切なアプローチをとることです。
丸め作業の目的を「しっかりキレイに丸くして閉じ目を中心一点でキレイに閉じる」ことだと誤解してしまうと、ある場合においては失敗につながります。
丸くするのも閉じ目をキレイにするのも、数ある手段の中の一つでしかなくて、手段を目的とすり替えてしまうのは良くありません。

 

例えば全く同じ生地から異なるパンを作るといった場合に、一つは丸め成形でもう一つはすごく横に長くする成形だったとしたら、前者は普通に丸めても構わないけど後者は普通に丸めたら成形で必要な長さを作れなくなります(長さにもよるけど)。
この場合、丸めてキュッと締めるんじゃなくて、生地を三つ折りのようにしてナマコ型にするか、あるいは折り畳みもせず長方形に整えるかのどちらかが理想的なアプローチとなるでしょう。
硬めの生地なら確実に後者です。ナマコ型にしてしまうだけでも余分に弾力がついてしまって支障が出たりします。
(まぁ、硬めの生地で横に長く伸ばす成形、なんてシチュエーションに出会うことは少ないでしょうけど)

 

別の例えで、柔らかい生地と硬い生地の2種類が目の前にあって、どちらも同様に丸くする丸め作業をやるのであれば、硬い方は締め具合を弱くする必要があります。

無駄に弾力を強くしてしまうとそれこそ成形出来るまでかなりの時間のベンチタイムを要してしまうし、十分にゆるませず成形すると最終発酵に時間がかかってしまうとか、最悪生地が暴れます。(チョココロネが発酵中に解けてしまうのが良い例)

ほんの少し表面がツルっと張ればそれでいいや、ぐらいの丸めにする選択肢だってあるのです。その時、綴じ目はあまり気にしません。

 

とは言え、丸パンのように成型で丸くするというシチュエーションであれば、ある程度綴じ目はちゃんと閉じるよう意識はします。そうできるように、成型までにしっかり弾力を緩めておきます。

 

「丸め作業ではしっかりキレイに丸くして閉じ目を中心一点でしっかり閉じる」っていう考え方だとこのような柔軟な対応は出来ないですよね。
パン作りのハウトゥーとして世の中に広まっている情報の中には、手段が目的にすり替わってしまっているものが結構多いです。
丸め作業だけでなく、他の工程でも同じような事が言えます。
そこを、ちゃんと目的を考えて目の前の生地にしてあげられることは何かという答えを導き出すという思考作業に変えていければ、もうパンマスターです。

 

今回の授業はここまで!