今回はパン作り初心者向けのお話。
パン生地の骨格的役割を担うたんぱく質「グルテン」について、その原理を徹底解説すると共に、経験者でもちょっと勘違いして解釈しがちな部分についての指摘も交えていきます。
パン作りの科学も、こんな時代ですがまだまだ解明されきっていないことも多いため、新たな情報が更新されることも多いのです。
なので、この際グルテンに関する”今”を一緒に確認していきましょう。
- グルテンの正体は二種類のたんぱく質と水の結合体
- 力を加えることでグルテンが作られるわけではない
- グルテンの量が食感に与える影響
- グルテンの網目構造を細かくするとガス保持力が高まる
- グルテンの弾力がパンのボリューム不足に繋がるパターン
- 作りたいパンのイメージに合わせてミキシングも自在に操る
グルテンの正体は二種類のたんぱく質と水の結合体
小麦粉の中には多種多様なたんぱく質が含まれていますが、その中でもとりわけ量の多い物質が二つあります。
「グルテニン」と「グリアジン」です。
そして、これらに水を加えることでそれぞれが結合し、弾性と粘性を併せ持った、粘弾性の「グルテン」という物質に変わるのです。
これらの物質がバランスよく含まれているため、小麦粉で作る生地は弾力も伸びも共存できるのです。
ですが、この性質は小麦ならではのもので、ライ麦やオーツ麦などそのほかの穀物ではこの二つがバランスよくそろっていない。
だから、小麦粉以外でつくるパン生地は、同じパン生地と呼びたくないほど伸びが悪くちぎれたりと、まるで異なる性質を持ちます。
力を加えることでグルテンが作られるわけではない
二つのたんぱく質に水を加えて、力を加えるほどグルテンそのものが作られていく、捏ねなければグルテンができないという認識が以前まではありましたが、どうやらそういうわけでもないようです。
正確に言うと、グルテンそのものは力を加えずとも水と混ぜた段階で形成されるそうです。
そして、ただ混ぜただけではグルテンの構造はとっても粗い目の網目構造のようなもの。それを引き伸ばしては畳んだり、叩いたりを繰り返していくうちに、網目構造がどんどん細かくなっていくのです。
だから、よく「食パンはよく捏ねてグルテンをしっかり作ること、フランスパンはちょっと抑えめにしてグルテンをあまり作らないこと」という解釈で考える人も多いですが、どちらにしても二種のたんぱく質と水が触れ合った時点でグルテンそのものは作られますので、実は間違った表現。
捏ねて生地を鍛えることというのは、いうなればグルテンの網目構造を細かくしていく作業と言い換えることができますね。
また、あまり捏ねずに生地を長時間寝かせてグルテンを繋げる製法もありますね。
「つなげる」という表現はとても的を射ていて、寝かせることでグルテンが作られるのではなく、グルテンは粉に水を混ぜた時点で作られ、そこで作られた無数のグルテンが寝かせている間に繋がっていくことで、寝かせる前はすぐにちぎれていた生地がよく伸びる生地に変わるのです。
グルテンの量が食感に与える影響
形成されたグルテンの量が多いほど、またそのグルテンの網目構造をより細かく質も強くしたものほど、パンをかじるときの「引き」が強くなります。
テレビのリポーターが焼きたてのパンを引きちぎった様子を映している映像を見ると、簡単にスパッと一刀両断ではなくクラム(パンの中身)が伸びながらも裂けていく様子が見られると思います。(裂けるチーズみたいな感じですよね)
この、ちょっと伸びる感じがあるパンを「引きの強いパン」と表現することがあります。
これは美味しい食パンの代名詞的な存在でもあるのですが、その代わり歯切れの悪さといったマイナスイメージでとらえることもできます。
パン屋さんによっては、とにかく歯切れの良さを重視してミキシングを最小限に抑えてパンを作るお店もあります。
グルテンの網目構造を細かくするとガス保持力が高まる
網目構造は家で例えると柱のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
良く捏ねて網目の細かい生地は、強い骨格でより多くのガスをキープできるため、特に上に膨らませたい食パンでそのメリットを発揮できます。
そして、パン作り初心者がお店に売っているパンのようにふんわりとボリューミーな焼き上がりにならないと嘆く最初の原因の多くは、こね不足によるグルテンの網目構造の形成不十分です。
グルテンの弾力がパンのボリューム不足に繋がるパターン
グルテンをとにかく緻密に形成することがボリュームアップに繋がるのかといえば、必ずしもそうではありません。
先ほど解説したように、グルテンは「弾性」と「粘性」を併せ持つ物質です。
特に、力を加えた直後は弾性が強く働きます。
そのため、タンパク量の多い粉を使ってよく捏ねた生地では、成型後の生地弾力はとても大きいのです。
いわば、新品の風船のごとく膨らませるのにとても力が要るため、焼成するまでに二次発酵で十分に生地を緩ませなければいけません。
ここで発酵不十分で生地の弾力が落ち着けていないと、いくらグルテン量が多いからといっても弾力に負けてあまり膨らむことができません。
また、そもそも発酵という工程を取らない、作ったらすぐに焼くスタイルのホットケーキ、スコーン、ソーダブレッドなども同様です。
発酵させないということは、生地を緩ませる時間を取らないということだから、生地作りの段階でグルテンをガッツリ形成してしまうと、これも膨らませにくい風船状態となり焼いた時の膨らみが悪くなってしまいます。
作りたいパンのイメージに合わせてミキシングも自在に操る
なんでもかんでもボリュームアップを目指せば良いわけではありません。
カンパーニュなど個性的なハード系では、あえて目の詰まったパンにすることで濃厚な味わいを求めたりするお店もあります。
食パンだってボリュームより歯切れの良さを意識してあまり捏ねないお店もあります(少ないですが)。
良く捏ねること、が必ずしも正解なのではなくて、まず作りたいパンをしっかり頭の中でイメージして、それが実現できるであろうミキシング具合を予想して実際に作ってみる、その結果としてイメージ通りのものができた時が本当の正解と言えるでしょう。
そのためには、やはりグルテンの仕組みを正しく理解しておく必要があります。
この記事を読んで以前よりグルテンについての理解が深まったことでしょうから、きっと今までよりもイメージ通りのパンを再現する力が高まったはずです。
一緒に生地マスターを目指して、今後もパン作りを楽しみながら上達していきましょう!
グルテンの仕組みについてわかったら、パン作りにおけるグルテンの弾力の扱い方の基本としてこちらの記事も読んでおくことをおすすめします。
byなおちゃん
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