パン作りでパンの出来栄えを左右する大きな工程「ミキシング」。
作るパンに応じてこね具合を変えることで、様々な食感に作りかえることができますが、その見極めの目安として製パン理論ではミキシング中の移り変わりとして四つの段階に分けて考えます。
実際にはいきなり段階が切り替わるのではなくほぼ直線的な移り変わりではあるのですが、これらを知っておくことでいま目の前にある生地がどういう状態で、これからどの程度どう触ればいいのかがわかるようになります。
今回は、ミキシングの目的と、生地の状態把握に役立つミキシング四段階について解説します。
ミキシングの目的とは?
ミキシング、つまり生地を捏ねることでしょ?
捏ねることはあくまで手段であって、捏ねること自体が目的ではありません。
ここをはき違えてしまうと、捏ねるパン作りと捏ねないパン作り二つのレシピに出会った時に、その意図が分からなくなってしまいます。
では、ミキシングの目的とはいったい何なのでしょうか?
順を追って解説していきます。
材料を均一に混合すること
まず、これはどんなパン作りにおいても必要となってくる目的。
極端な話、水に粉を浮かべたままでは生地は形成されませんし、当然パンにもなりません。
細かく言えば、パン酵母が均一に混ざらず一か所に集中してしまうようなことがあれば、その生地は発酵具合が場所によってバラバラで、非常に不均一かつ不安定なパン生地となってしまいます。
パン作りには小麦粉と比べてたったの1%以下の配合量しか使わない材料も多くあります。そういう微量配合ものは特に材料の均一混合を意識しないと、安定性のないパン生地となってしまいます。
また、生地全体の水和も重要です。
粉がしっかり水と馴染むのはもちろん、砂糖や塩など他の材料も水にしっかり溶けこむことで、生地全体が均一化し安定したパンが作れるようになります。
生地に空気を混入させる
生地に空気を混入させることで、生地の気泡が多くなっていきます。
気泡が多くなるということは、キメが細かくよりふんわりとボリューミーに膨らむ生地になるということです。
空気の混入が少なく、ミキシングの段階で生地内の気泡が少ないと、膨らむための部屋が無いことからキメの粗いパンとなってしまいます。
強力粉など生地のコシが元々強くなる粉をつかっていながらも、こねが不足し生地内への空気混入が少なかった場合、膨らむ部屋が少なくボリュームが出にくい上、コシは強い方だから硬くて膨らませにくい風船のような状態という、ダブルパンチでボリュームが出にくくなり結果としてふっくらと焼きあがらない。
ふわっとエアリーでボリュームある軽いパンを焼き上げるには基本中の基本と言える考え方です。
適度に粘弾性をもつ生地にする
どんなに発酵力の強いイーストを使ったところで、発酵で生成されたガスを保持できなければ意味がありません。
穴の開いた風船はいくら膨らませようと膨らみませんし、逆に丈夫すぎて硬い風船は驚異の肺活量でもない限りは膨らませるのが難しいですよね。
パン生地も同じで、しっかりガスを保持できうる力(弾性)は必要ながらも、自由に伸びていく性質(粘性)も必要です。
捏ね続けることで、生地のたんぱく質「グルテン」の網目構造は薄く伸ばされ幾重にも重なり続け、生地の弾力も伸び(伸展性)も向上します。
ミキシングで変わる生地の状態の4段階
第一段階
ピックアップステージ(つかみどり段階)と呼びます。
ミキシングの最初期の状態で、この時はまだベタベタとしていて材料の混合具合は不均一。
そして、生地中のグルテンがしっかりと繋がっていないため、つかみどりすることで簡単にちぎれてしまいます。
粉と水をゴムベラでサッと混ぜ合わせただけの状態がまさにこの段階です。
第二段階
クリーンナップステージ(水切れ段階)と呼びます。
この段階では生地としての繋がりが生まれ、つかみどりしても簡単にちぎれることはありません。
粉が水をしっかりと抱き込んでいますが、グルテン形成はまだ甘く、網目構造はまだ粗く厚い膜となっています。
ミキサーを使用している場合はボウルがあらかたキレイになります。 ボウルがキレイになる=Clean Upするという意味からクリーンナップという呼び方になっています。
(クリーン・アップでもいいですが、英語読みするとCleanupと繋げて読みますからクリーンナップと書いた方が発音に近い)
手ごねの場合でも、ピックアップステージの生地ほど手にべっとりと生地が付くようなことはありません。(高加水など元からべたつきやすい生地を除く)
ですが、まだ生地の表面は滑らかとは言えず、薄く伸ばそうとしても破れてしまいます。
第三段階
ディベロップメントステージ(結合段階)と呼びます。
この段階に入った生地は、ツヤと滑らかさが出てきます。
グルテン組織の形成もかなり進んで、緻密な網目構造となっています。
ミキシングの段階の中では一番弾力が強い。
ミキサーを使っている場合、生地がボウルに叩きつけられてバシバシと乾いた音がします。
この段階に入ってくると、まだ抵抗はありますが生地が薄く伸びることができます。
第四段階
ファイナルステージ(最終段階)と呼びます。
生地のツヤと滑らかさが最高潮に達し、ディベロップメントステージの時にあった弾力が少し緩み、とても薄く滑らかに伸びる生地となります。
手ごねではここまで捏ね上げるのは至難のワザで、どんなに良くても第四段階の手前くらいまでしかたどり着けないことが多いです。
ミキサーを使っている場合、ボウルに叩きつけられる音がやや湿った感じに変わります。
手ごねしかやったことのない人はこの段階の感覚がわからないかもしれませんが、ミキサーで捏ねていると第三段階から第四段階に移るとそのツヤ感と滑らかさが一気に良くなることが実感できます。
まとめ
スタンドミキサーを含めて、自動のミキサーでミキシングを行う人は、これらのミキシング4段階を理解することは、回転速度を操る上で欠かせないことです。
スタンドミキサーはメーカーによっても回転数が違いますし、プロ向けのレシピのミキシングタイムをそのまま再現しても決して同じようにはいきません。
自分のスタンドミキサーの回転数をどの程度にして、それぞれ何分回せばいいのか。その判断基準として必要な知識であります。
どの段階では低速を使って、どの段階からは高速を使って…といった最善の目安があります。
手ごねにおいても、この四段階を理解し、これから作ろうとしているパンはどのくらいまで捏ねる必要があるのかを、考えることができるようになるキッカケになるため大事な知識です。
食パンはどの段階まで捏ねるといいとか、フランスパンはこの段階までとか…逆に、この段階までしか捏ねないで作るなら他の工程でどうやって補うか…とか色々ヒントが繋がってきます。
次回はさらに踏み込んだ部分まで解説していきます。
byなおちゃん
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